株を買った理由は今でも有効か?
以上のことを念頭に置いて、購入後40ドルから10ドルに下落した株式の問題に戻ろう。これからどうするべきか。それには3つの選択肢がある。
1.株を売って損失を計上する。
2.株を保有し株価が戻るのを待つ。
3.さらに買い増し、難平買いをする。
答えは、場合による。賢い判断をするためには、あなたがその株を最初に40ドルで買った時点に立ち返り、なぜそうしたのか自問することが必要となる。
換言すれば、その株は現在負け犬かもしれないが、買った当初はこうなるとは思っていなかったはずだ。その購入はバリュー投資に基づくものだったのか? 当該企業の一株当たりの本質的価値が40ドルよりずっと高いと思って、安売りに飛びついたのだろうか。または、良いニュースが出ると思って買ったのか?
当該企業が予想以上の利益を報告したり、画期的な契約を締結したり、他の企業から買収の提案を受けたりということが行われると予想したのだろうか。それとも、市場の気運があなたにとって逆風となり、自分自身が一番の大馬鹿の座にいるのではないかと徐々に気付き始めたところかもしれない。
この投資家版ハムレットの台詞「売るべきか、売らざるべきか」に答えるためには、「なぜそもそもその株を買ったのか」に立ち返り、次の簡単な質問を自分に問いかけよう。「その理由は今でもまだ有効か?」
もしまだ有効なら、当初の購入理由をかき消すような他の問題が当該企業や市場全般にない限り、保有し続けたいと思うだろう。当初の理由がもう有効でないなら、同じくらい重みのある代わりの理由があるだろうか?
例えば、バリュー投資戦略に基づき一株当たり40ドルの株を購入したが、30ドル値下がりしたとする。まずすべきことは、企業のファンダメンタルズに立ち返り、本質的価値の算定が間違っていなかったか確認する。言い換えると、本質的価値を一株当たり75ドルと考えていたのに、株価が現在一株当たり10ドルまで下落していたとすると、企業のファンダメンタルズを再検討した結果、まだ本質的価値が75ドルであると確信しているか、ということだ。
もしそう確信しているなら、さらにバーゲン価格になっているということだから、一株当たり10ドルでさらに買い増しすることを強くお勧めする。反対に、再検討の結果、企業のファンダメンタルズが最初に計算したよりもずっと低いことが判明した場合や、悪いニュースが出たせいで本質的価値が現在の株価まで下落した場合は、その株式を売却し損失を計上して、これを教訓に今後はもっと慎重に投資することを強くお勧めする。
また、その株を買った理由が、良いニュースが出ると考えたからだったら、「そのニュースが報じられたとき、何が起こったか?」と自問してほしい。プラスの影響がすでに株価に織り込み済みだったか? または、あなたが勘違いしていただけで、そのニュースは思っていたよりも実際には悪く、その結果株価が下落したのではないか?
いずれにせよ、買った当初の理由はもう有効ではないので、その株を引き続き保有すべき他の理由がないか検討するべきだ。
例えば、株価があまりにも大きく下落した結果、バリュー投資戦略に基づきその株を保有し続けるほうが良いと判断できることもある。しかし、バリューを検討した結果、過小評価されているわけではなく、新しい良いニュースもない場合は、そんな株を保有すべき理由など、この世のどこを探してもない。その株を売り、教訓を得て、もっと良い投資先を探すべきだ。
最後に、あなたがもし大馬鹿理論に基づいて株を買い、現在一株当たり10ドルまで値下がりしているとしたら、あなた自身が最大の愚か者である可能性が高まっているということだ。すぐに株を売り、出直すべきだ。
どっちにしても、「ほんの六か月前にずっと高い価格で買ったのだから、損失を確定したくない」と思うことだけはやめよう。この考え方こそが、一文無しへの一番の近道だからだ。代わりに、「新しい情報に基づいて方向転換する」というシンプルなやり方でいこう。これは人類共通の生存戦略であるだけでなく、この世界を渡り歩いていくための重要なカギである。
新しいことに挑戦すれば、最初はつまずくこともある。そんなときは新たな情報に基づいてアプローチを変え、再びチャレンジすればいい。この手順を何度も繰り返せば、きっといつかは成功するはずだ。
このプロセスは、自分が今何をしようとしているのか、そこでは物事がどのように動いているのか、なぜそうなのか、どのようにそうなったのか、それらを理解することから始まる。
ジョーダン・ベルフォート
投資コンサルタント