桜といえば春に咲くイメージが強いですが、じつは秋冬に花を咲かせる「冬桜」と呼ばれる品種も存在します。この記事では、冬桜とはどんな植物なのか、その概要やメカニズム、主な品種とその特徴、冬桜が見られる名所などについて詳しくご紹介します。

冬桜とはどんな花?


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「桜」はバラ科サクラ属の落葉樹を指し、自生種と野生種が多数存在します。これらの種類は交配することで、多彩な園芸品種が生まれています。園芸品種の中には、秋や冬に咲く桜も含まれており、これらは一般的に「冬桜」と呼ばれます。もっとも、冬桜は秋冬だけではなく春にも咲き、多くは秋冬の開花は控えめですが、春には盛大に花を咲かせます。また、品種として「冬桜」という名前を用いることもあり、これはヤマザクラとマメザクラが自然交配して生まれた品種のことを指します。

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冬桜の花が生まれた過程とは


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冬桜には園芸品種として生み出されたものが多くあります。秋冬に咲く桜が生まれた過程について解説しましょう。

桜が咲くメカニズム


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まずは一般的な桜が春に咲くメカニズムをご紹介します。一般的な桜は春に開花し、花が散った後の夏に新たな花芽を形成します。そして秋になると、成長を抑える植物ホルモンが供給されて桜は休眠状態に入り、冬の間は休眠したまま過ごします。

一定期間冬の寒さに晒されると、成長を促す植物ホルモンが供給され、桜の休眠状態が解除されます(休眠打破)。これにより、春になると桜は花を咲かせます。つまり、桜の花が咲くためには寒さが必要なのです。

冬に咲く桜ができた過程とは


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日本に自生している桜の祖先は、ヒマラヤに分布するヒマラヤザクラで、その開花期は秋です。しかし、ヒマラヤザクラが日本に来てからは、気候に対応するために冬は休眠し、春に咲くように変化していったと考えられています。


日本の桜の祖先と考えられるヒマラヤザクラ。Jindowin/Shutterstock.com

こうして日本の桜は春に開花するようになったものの、先祖返り的に季節外れの秋冬に開花する桜の変異枝が出現しました。これらの変異枝を接ぎ木などで性質を固定化させることで、秋冬に咲く品種の桜が誕生しました。

春咲きの品種が季節外れに咲く理由


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春に開花する品種の桜が、まれに季節外れの秋や冬に咲くことがあります。このような咲き方は「不時(ふじ)現象」といい、一般に「狂い咲き」や「返り咲き」と呼ばれます。

狂い咲きは、台風や虫害などで桜の葉が失われると起こりやすくなります。葉がないと休眠ホルモンが出ず、その結果、夏に形成された花芽がそのまま成長し、秋に低温の日が続いた後に暖かい日が来ると、桜は春になったと勘違いして咲きやすくなります。

狂い咲きしてしまうつぼみは基本的に一部に限られ、狂い咲きした桜の木も、翌春にはきちんと開花を楽しむことができます。