体の一部のようなささやかな存在感。
アクセサリーはなんだか気恥ずかしくて、これに出合うまでまったく着けてきませんでした。年齢を重ね、ゴールドのネックレスなら持っていてもいいかもしれないと思い、6年ほど前に『ギャラリードゥポワソン』で購入。グラフィックデザインを手がけるデザイナーらしく、結び目が数か所施されただけの、留め具もないミニマルなつくり。普段、違和感があるとすぐ外したくなるのですが、これは何も感じないほど繊細で主張が少ないから、服装を選ばず入浴時も就寝時も着けっぱなし。肌身離さず着けているため、着替えの際にうっかり引きちぎってしまい、3回ほど修理に出しました。今ではすっかり体の一部のように。最近、レザーに真鍮のチェーンを施した靴を製作中なのですが、このネックレスがインスピレーションの源になっているのかもしれません。
柏崎 亮 Ryo Kashiwazakiシューズデザイナー
2010年にレザーブランド〈エンダースキーマ〉をスタート。独創的なアイデアとクラフトマンシップによる革靴や革小物を展開。
illustration : Megumi Sasaki text : Shoko Matsumoto
&Premium No. 131 LONG-TIME STAPLES / 使い続けたくなる、愛しいもの。
ファッションやライフスタイルにまつわるもの選びにおいて、時間をかけて長く付き合っていく姿勢が、これまで以上に必要とされているように思います。でも、ただ漫然と「長く使い続ける」ことだけが重要ではなく、それを使ったり、身に着けたときに、出合った頃と変わらぬ「愛おしさが続いている」ことも、忘れてはならない大切な要素なのではと考えます。初めて手にしたときの高揚感、作り手のこだわりに惚れ惚れとしたこと、使い続ける日々の中で紡がれた大切な思い出……。そういったさまざまな「記憶」が、人とものを、長きにわたって、幸せなかたちで繫ぎ合わせていくのです。〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川明さんをはじめ、たくさんの方々に「使い続けたくなる、愛しいもの」にまつわるエピソードについて聞いてみました。
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