私たちのメンタルヘルスと大いに関わりのある「睡眠」。睡眠のクオリティーが人生を左右するという事実、健やかな睡眠生活と、メンタルヘルスを維持する秘訣について、二人の専門家に聞いた。
日本人の睡眠時間は短くなっている
睡眠研究が専門の西野精治先生によると、睡眠の重要性が注目され始めたのはここ最近のことだという。「1990年代~2000年代にかけて、アメリカでは徐々に啓蒙されるようになりました。日本人は世界で最も睡眠時間が少ないという統計があります。1960年代から比べると、大人世代では1時間強ほど睡眠が短くなり、夜10時台に寝る人が6割いたのが今では2割くらいに」。メンタルヘルスとの関連を聞いてみると「動物実験では、睡眠不足によって食欲が増進したり、行動の異常が見られたりするなどの影響が表れるよう。ヒトにおいては個人差はありますが、精神的に不安定になる可能性は考えられますね」(西野先生)。
睡眠時間が平均6時間未満の、西野先生が“睡眠不足症候群”と指摘する人たちは、最新データによると23.7%という結果に。2020年よりは減っているものの、依然として全体の4分の1近くの人の睡眠時間が不足しており、日本人の睡眠は改善の余地があることが窺える
出典/ともに「睡眠偏差値®2024」 ブレインスリープ調べ
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睡眠時間の不足が招く健康上のリスク
「アメリカで100万人を対象にガンに関する統計をとり、追跡調査をしたところ、睡眠時間と死亡率との関連が見えてきました。睡眠時間が極端に短い人や、逆に長い人は死亡率が高く、平均的な睡眠時間の人ほど死亡率が低かったのです。その統計をきっかけに、医学界では睡眠にスポットライトが当たるように。睡眠不足による具体的なリスクとしては、ガン、生活習慣病、感染症などが挙げられます。さらに、アルツハイマーや認知症に関わりがあることもわかってきました。睡眠には、若いうちから気を遣っておくことをおすすめします」(西野先生)。睡眠は体を休めるのみならず、脳を“掃除”する作用がある。睡眠不足の場合、老廃物が蓄積してしまい、脳系の疾患の一因になることも。病気を防ぐ意味でも、睡眠は有効なのだ。