勉強が続かなくて悩んでいませんか? オンライン個別指導塾「となりにコーチ」の代表講師・粂原圭太郎氏の著書『科学的アプローチで勉強がとまらなくなる ストレスフリー勉強法』によると、「脳科学的に正しい勉強法がある」と言います。一体どんな方法でしょうか? 本書から一部を紹介します。
4つのタイミングで勉強すると、忘れにくくなる
皆さんは、「一夜漬け」をしたことはありますか? 定期テストの前にやった、もしくは今もやってしまう人もいるでしょうか。私も、一夜漬けに頼っていた時期があります。しかし、一夜漬けをしたことがある人も、勉強内容が身についた経験はあまりないでしょう。短時間で集中的に覚えた内容は、脳が忘れやすいからです。
では、一夜漬けが長期的な学習として効果がないなら、その「逆」はどうでしょう? 逆とは、一夜漬けのように一気に勉強するのではなく、一定の期間を空けて勉強することです。実は、間隔を空けて勉強するのは記憶の定着に非常にいいとされています。この効果を「スペーシング効果」と呼びます。
スペーシング(spacing)とは、「間隔を空ける」という意味。情報や内容を短期間ではなく、時間を空けて繰り返し学習すると、長期記憶の向上につながるのです。スペーシング効果は、「エビングハウスの忘却曲線」で知られるドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが発見しました。忘却曲線とは、時間が経つにつれて記憶したことを忘れてしまう様子を表した曲線です。
一度覚えたはずの数学の公式が1週間後にはおぼろげになり、1か月後には完全に忘れてしまう経験は誰しもあるでしょう。一定期間を空けながら分散・反復で勉強していくことで、なるべく忘れないように効率を上げていくのが狙いです。
エビングハウスの忘却曲線から導き出される復習の最適なタイミングは、「1日後」「1週間後」「1か月後」の31回。私は、ここに「ある時間帯」をプラスした合計4回をおすすめしています。それは、覚えた日の「寝る前」です。
人間の脳は、寝ているときに記憶を整理します。睡眠中は何もしていないと思ってしまいますが、脳はしっかり働いています。寝る直前にインプットした記憶は、脳の中で整理され、定着するのです。新しいことを覚えるときには、次の4つのタイミングで復習するのが効果的です。
(広告の後にも続きます)
効果的な復習の4つのタイミング
(1)初めて学んだ日の寝る前(就寝の30分前)
(2)翌日
(3)1週間後
(4)1か月後
たとえば、新しい英文法を覚えたとします。まずはその日の寝る前に学習したことを思い出しながら要点をノートにまとめてみます。まとめ方のおすすめは2種類あり、「学んだことを時系列で書き出す」か「印象に残ったことから順番に書き出す」のいずれかがいいでしょう。
時間がない場合は「その日の学習で得た一番大きな気づき」を1つピックアップするだけでもOKです。翌日にそれを見返しながら、関連する文法なども併せてインプットします。1週間後には少し忘れているので、まず要点を思い出そうとしてみて、うまく出てこなかった部分を中心に学習し直してみてください。
練習問題を解いたり、自分で問題を作ってみたりするのもおすすめです。自分で問題を作ることで、本質的な理解が深まります。1か月後のタイミングでは億劫に感じてしまいますが、やるのは作った問題を解くだけです。このように繰り返し学習すると、記憶に定着するだけでなく、その単元でどこが弱いのかが把握できるようになります。
タイミングごとにまったく同じやり方で復習するのではなく、いろいろな形で思い出すことによって脳をマンネリ化させないのがポイントです。復習のタイミングを忘れてしまう人に、おすすめのアプリがあります。それは「Google Keep」というGoogle のメモ帳アプリ。メモ帳とは言ったもののリマインダー機能と一体になっており、勉強の管理に非常に便利です。
リマインダー機能で毎日決まった時間に「復習タイム」のアラートを設定しておき、メモの部分に「何日に何をやるか」の詳細を書いておけば忘れません。復習を4回も行なうのは多すぎだと感じるかもしれません。しかし、新しいものをいくらインプットしたとしても、覚えたそばから忘れていっては元も子もありません。
今日新しく覚えたことを、1か月後に果たしてどれだけ鮮明に覚えているでしょうか? 今日覚えた公式は、復習しなければ1か月後には「100%」忘れます。何度も復習して土台を固めていくのは効率が悪いように見えますが、まったく復習せずゼロから新しく覚え直すほうがよっぽど非効率です。たとえ少しずつでも、着実に身につけていきましょう。
実際に、定期テストの前に一夜漬けで勉強したときに英語が55点だった生徒は、スペーシング効果を利用して細かく時間を分けて勉強したときには80点を取ることができました。勉強した総時間数はほぼ同じなのに、後者のほうが圧倒的にテストの点数がよかったのです。同じ勉強時間で勉強効率が変わるなら、やらない手はありません。
実は、その生徒は、成績が向上しただけではなく、「勉強が楽しくなってきた」と言って、以前より意欲的に勉強するようになったのです。これは、結果が出たことで勉強に対するストレスが軽減されたことの表れでしょう。十分な復習時間がないときは、「こんな内容を学んだ」と軽く触れるくらいでも問題ありません。寝る前にざっと確認しただけのときは、翌日にしっかり振り返るといいでしょう。
とにかく時間を空けて「刻む」ことが大事です。これができると、それまでの定期テストなどで一夜漬けだった人も、コツコツやる習慣がついていきます。「自分ってコツコツやることもできたんだ」と自信にもつながり、勉強のモチベーションが上がるなど、いいことだらけです。
粂原圭太郎
オンライン個別指導塾「となりにコーチ」の代表講師