公共料金の支払い、宅配便の手配、通販で買った商品の受け取り……かつて“食品や日用品を買う場所”だったコンビニは、顧客のニーズに応えるべく、年々進化を重ねた結果、多岐に渡るサービスに対応するようになった。しかも、24時間営業だ。それが全国で5.7万軒もあれば、毎日のように事件が起こっても何ら不思議ではない。そこで、現役のコンビニ従業員兼ライターの筆者が体験した出来事を赤裸々に紹介していく。
今回のテーマは「レジでの迷惑客」だ。昨今自動レジが導入され、従業員の負担が減ったと思われがちだが、実は裏目に出ていることもある。そんな事情も含めて驚きの場面に遭遇する店員の気持ちを知っていただきたい。
◆①「1円」で舌打ちする客
単価が低い商品は、まとめて買うと税込みになってしまう。これに、いちいち舌打ちをしてくる初老の客に出くわす。「別会計にしろよ! 1円余分に付いたじゃねーか!」と言われても、基本はスルーだ。いちいち気にしているとキリがない。
そんなことを気にしてレジ作業なんかやっていたらレジが回らなくなってしまう。いい大人がみっともないと思うのは、私だけだろうか?
◆②徴収票を大量に持ち込む客
税金徴収の時期などは、10枚以上の徴収票を処理することも多い。何枚も処理しているなか、1枚だけすっ飛ばして、領収書だけ切りとって客に返却してしまうと、会計処理が行われていない「架空取り引き状態」になってしまう。
会計精査まではタイムラグがあり、その場では分からない。担当した従業員も処理したと思い込んでいる場合が多く、ますます発見が遅くなる。個人的な内容や、会社がらみとなると、お手上げ状態になりかねない。その場合は防犯カメラで状況を確認し、徴収票から連絡先が割り出せなければ最終的に本部処理となり、そのペナルティはオーナーにのしかかる。
自動レジのおかげで、会計処理するミスは減った。しかし、作業自体には変わりがないため、筆者のような経過豊富な従業員でも、処理枚数が多くなると毎回冷や冷やするものだ。
◆③大量の小銭を消費しようとする客
ちょっとした買い物で溜まった小銭をまとめて使う客……これが、自動レジになった途端に増え出した。まるでATMのように、持参した小銭をバラバラと機械に入れる。
ここで自動レジの弊害が現れる。容赦なく小銭を投入すると、投入口で小銭が詰まり、エラー反応を起こしてしまうことがある。すると、もう1台のレジに客が集中し、2台分のレジを捌かなければならないという惨状に。無事に復旧できたら良いが、最悪本部対応となる。
小銭を入れた本人が謝罪もなく復旧を待っている姿に腹が立ったのは一度や二度ではない。もちろん、その場で注意を促すものの、注意しても聞かない客の方が多い。そのため、オーナーと相談して、何度も繰り返すなら出入り禁止しても構わないというルールを設けた。
◆④ポイントカードを間違え続ける客
来店するたびに、他社のポイントカードを提示する常連客がいる。
「だから使えませんって!」「さすがに覚えてくださいね」とやんわり指摘するが、「あかんて忘れてまうで」と名古屋弁混じりで言い返して来る。もはや、漫才だ。
よくいるクレーマーとのやりあいは1回で終わるケースが多いが、これに関してはもう数えきれないほど……。なぜ覚えてくれないのだろうか。ちなみに、根比べは現在進行中で、この客は従業員同士で、ロックオンされている。
◆⑤なぜか怒っていた客
かなり前の話だが、その客のことはよく覚えている。齢60代手前、スーツでビシッと決めていた。レジを受けようとすると、持っていた酒瓶をいきなり「ドン!」と置き、こちらを睨んでいる。待たせたわけでもないから、全く意味が分からなかった。長年サービス業をやっているが、こんなに主張が強い客に出くわしたのは初めてだった。
会計後、「もう、ここには来ないからな!」と一言。こちらも、もう二度と来てほしくなかったので「ありがとうございました!」といつもより大きめの声で対応。以来、本当に来なくなったので、いい鬼退治ができた。それにしても、何に怒っていたのだろうか……。
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これはあくまで一場面を切り取っただけで、実際にはまだまだリアルな場面に遭遇する。レジで「ありがとう」と言ってくれるだけで、良いサービスを提供するモチベーションになることを覚えておいてほしい。
<TEXT/たける>
【たける】
サービス業一筋29年。大学1年生の時に大手ファーストフード店でアルバイトをスタート。その後中退し、中途入社。勤続21年ののち、コンビニ業界へ。