食も人生も味わうように生きる フードエッセイスト・平野紗季子がつづる今と未来

フードエッセイスト・平野紗季子さんの最新作『ショートケーキは背中から』が刊行された。食への深い愛情と独自の視点で多くの読者を魅了する平野さんに、今回のエッセイに込めた思い、会社員として働き、そして独立した今の気持ちについて聞いた。

食への熱狂

2014年から4年半、会社員として働きながら、フードエッセイストの二足のわらじを履いていた平野さん。当時は遅くまで働き、夜中や土日に執筆するといった生活で、人一倍仕事に打ち込んできたそうだ。

そこから会社員時代の広告の仕事に加えて、執筆活動や企画することも仕事として成立させられるようになり、独立に踏み切った。今も働き過ぎてしまう傾向があるが、一つひとつ丁寧に向き合っていきたいと言う。

「お菓子屋さんをやったり、会社もやって自分が代表を務めていて。いろいろやっていると、やっぱり負荷がかかってくるんですよね。ちょっと忙しすぎるので、少し休んでリフレッシュしようかなって。でも「休みたい」と言っておきながら、実際に休んでないのが問題です(笑)」

平野さんがディレクションするお菓子屋さん「(NO) RAISIN SANDWICH」(ノー・レーズン・サンドイッチ)は今年3周年を迎えた。先日はピエール・エルメ・パリとコラボをするなど、鮮やかな発展を見せている。今後、彼女の食への探求はどこへ向かうのだろう。

「目の前にあるやりたいことを突き詰めていけば、自然と次につながっていくんじゃないかと思っているんです。だから、逆算して具体的に目標を立てるタイプではないですね。ただ、昔から食べ物に関して何かを感じて、それを文章にするということはずっと続けています。今後どんな局面に立つか、どんな形で仕事をしていくかはわかりませんが、ずっと書き続けたいという思いはあります。今、食べ物に対して熱狂している一人の人間として、この時代にこんなものがあったということを残していきたい、そんな役割を勝手に感じています」

interview & text: Tomoko Komiyama photo: Tomoko Hagimoto

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