サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。No45となる今回は、本誌No131に登場した『パノラマ』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。
毎回恒例、川村さんによるサンドイッチのスケッチ。今回は、タルティーヌ(オープンサンド)と、グリルドサンド。どちらも自家製パンが絶品!
6年間で生まれた、さまざまなサンドイッチ店。
本誌で連載「パリのサンドイッチ調査隊」を始めてからの6年近くで、パリにはさまざまなサンドイッチ店がオープンした。それでもまだ、これまでになかったタイプの店が登場するのだから、驚く。『パノラマ』を見つけたのは、夏の始まりのある週末。早めの夕食を友人と共にして、散歩をしているときだった。角地にあるその店のガラス戸は全て開け放たれ、テラス席は満席で大いに賑わっている。わりとよく通る道なのに見覚えがなかった。さっと見渡すも、店名が見当たらない。入口の脇にメニューらしき白い紙が貼られていたので、近づいた。するとそこには説明書きがあった。
メニューの一部がこちら。
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「パノラマはベーカリーレストランです」
レストランが自家製のパンを作ることはあるし、レストランから始まってパン屋を出した店もある。さらには、パン屋がカフェ・レストランをスタートしたケースも。でも、この店は様子が違う。読み進めると、こうあった。
「ベーカリーにインスパイアされた私たちの料理は、きちんとした産地の、新鮮な季節の食材のみを使用しています」
19時から22時30分、と記されたメニューに目を走らせると、全てがパンを主軸に組み立てた皿というわけではなく、パンを色々な形状(パン粉や具材など)で活用、もしくは、楽しむための料理のようだ。その昔「パンと、パンの友だち」というタイトルの連載をやっていた私は、そのどれもに興味を惹かれたが、いまは、やはりサンドイッチ(なかでもオープンサンドのタルティーヌ)に引きつけられる。食べに来なくちゃ!と思ったのは、仔牛肉のタルタルオープンサンドだ。