スモークしたオイルと、塩胡椒だけで味付けをしたタルタル。
本誌で紹介した、仔牛のタルタルが盛られたタルティーヌ。上に散らしてあるのは、ポテト。
メニューからは、どんな盛り付けで出てくるのか推測しかねたけれど、果たしてそれは、たしかに料理で、皿に盛り付けることでしか成り立たない、フォカッチャを用いた一品だった。加えて、スモークしたオイルと塩胡椒だけで味付けをしたタルタルはワインを欲する味で、夏の夕暮れによく似合う。はじめは、ナイフで切って食べていたのを、思い切って、指で摘んで食べてみたら、味が全然違った。このほうがずっとおいしい。それは、ホテルのラウンジで頼んだクラブハウスサンドを、人目を一応気にしてナイフとフォークで切って食べてはみたもののなんだか味気なく感じて、「いいや!」と手で掴んで齧り付いたら「やっぱりこのほうが断然おいしい!」と納得した瞬間と同じだった。すました顔して出てきた料理ほど、指で摘んで口に運んで食べたくなる。
摘んで食べるの、試してみてほしいです。
(広告の後にも続きます)
なんとも食欲をそそる匂いを放っていた、グリルドチーズサンド。
そして秋。今年は肌寒くなるのが早かった。9月下旬からすでに暖房が必要だと思っていたら、例年よりも2週間くらい前倒しで、住んでいるアパートにも中央暖房が入った。『パノラマ』にランチに出かけたのは、いよいよ寒い季節に向かっていることを感じたその日だ。ランチメニューには、いつも、サンドイッチとタルティーヌが1つずつ用意される。店に着いて席に案内されると、隣のテーブルの人が注文していたらしいグリルドチーズサンドが運ばれてきて、それがなんとも食欲をそそる匂いを放っていた。焼き色もいかにもおいしそう。卵黄のコンフィをのせたブロッコリーのタルティーヌを頼むつもりでいたけれど、匂いに負けて、グリルドチーズに変更した。