茶房・食房・宿房で過ごす。都心から40分、真のオーベルジュ「オーベルジュときと」

戦前に建てられた老舗料亭「無門庵」の一部と庭園を生かし、独立した食房、茶房、1日4組限定の宿房から構成される「Auberge TOKITO(オーベルジュ ときと)」。2023年の開業にあたり、欧州の日本料理店で初となるミシュラン2つ星を5年連続で獲得した石井義典氏が、凱旋(がいせん)帰国した。海外で料理人として20年間、第一線を走り続けてきた石井氏が、拠点をロンドンから立川へ移すに至った理由とは?

骨組みや屋根など料亭時代の面影を最大限残した、茶房


庭園のなかにひっそりと佇む茶房は全16席。茶房内には、料亭時代から受け継がれる、炉を切った茶室も残る。現時点では宿泊者の利用に限る

骨組みや屋根など料亭時代の面影を最大限残して設計されたのが、「茶房」。木戸を開ければ、地元の「狭山園」三代目、池谷香代子さんが仕切る、わび・さびの世界が広がる。掘り炬燵(ごたつ)とハイチェアの席を選ぶことができ、日中は好みのお茶とともに季節に応じてメニューが変わるアフタヌーンティー「茶請箱(ちゃうけばこ)」を提供。夜はバーとしての利用も可能だ。


季節に応じてメニューが変わる「茶請箱」と3種類のお茶がセットになったアフタヌーンティー(1名 ¥8,855~、税・サービス料込、2時間制) 

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“誰にも会わず、何もしない”ことが至福となる、宿房


新しい建築物として設計された宿房は、1日4組限定。レセプションから客室までの渡り廊下には、「ここでいったん頭をリセットしてほしい」という想いが込められている。

真空管アンプでレコードが流れるレセプションを通り、石畳や石庭に続いて現れるのは、障子や土壁といった日本文化を取り入れた、落ち着きと重厚感のある客室。


寝室のベッドから見える眺め。各室それぞれに厳選した寝具を取り揃える。リクライニング機能を搭載したベッドをはじめ、電磁波の影響や地磁気の乱れがないことから快眠環境をサポートするメタルフリーのウッドスプリング、弾力性と通気性を兼ね備える馬毛まくらなど、滞在時に触れるものからも日本の文化や魅力を発信

106平方メートルの開放感あふれる客室には、リビングと寝室のほか、全室に温泉かけ流し露天風呂、スパトリートメントベッド、ミニキッチンを完備。都心の喧騒を忘れ、“誰にも会わず、何もしない”ことこそが、至福なのだと気付かされる。


地下1,300メートルから汲み出した温泉かけ流し露天風呂付きのバスルーム

朝食は食房でとるのが基本だが、宿房からすぐの位置に構えるバンケットルームでいただくことも可能。梁(はり)や柱は料亭時代のままを生かした和モダンの空間は、高揚感とともに上質なやすらぎをもたらす。


冠婚や宴会などハレの舞台にニーズが高まっているバンケットルーム

こうして、茶房でわび・さびの美意識に浸り、食房で日本の食の豊かさに触れ、宿房で“何もしない”境地を味わう。およそ24時間の至福に酔いしれることができる「オーベルジュ ときと」。“ときと”ともに異なる空間で、過ごし方も変化していく。これこそが真のオーベルジュの愉(たの)しみ方と言えるのではないだろうか。

text: Aki Fujii

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