昨年大ヒットした民放ドラマ「VIVANT」の舞台にもなったモンゴル。「牧草地」や「ゲル」のイメージがありつつも、実はデジタル化が進んでいるモンゴルでは現在、ある問題が深刻化しているといいます。『モンゴルがいま熱い! モンゴル不動産投資をおススメするこれだけの理由』(WAC)の著者である安藤義人氏が詳しく解説します。
モンゴルの「観光立国への可能性」
モンゴルの第3の産業として注目されているのが「観光業」です。
実はモンゴルでは、社会主義時代は観光客の受け入れを制限していました。しかし、民主化されて以降、多くの観光客が訪れるようになり、政府は観光業を基幹産業のひとつに育てるため、効果的なマーケティングを行いながら、他の国・地域から観光客を呼び込む施策を行ってきました。
その結果、2023年の観光客数は65万人超え。これは、新型コロナウイルス感染症が拡大する前の2019年の観光客数57万7,300人を超えて過去最高の数字を更新したことになります。
さらに現在、モンゴル政府は、長期的に観光客数を200万人に増やす目標を掲げています。
主要国の航空会社も直行便や増便を予定しており、たとえばユナイテッド航空は、2024年から、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港からウランバートルの「チンギス・ハーン国際空港」への直行便を運航する予定です。また、JALは2023年7月に運行を開始した成田からの直行便に加えて、2024年からは大阪国際空港からも直行便の運航を検討しているとしています。
このように主要国が直行便や増便を増やそうとしているのは、観光だけでなくビジネス目的の意味合いも強いと思いますが、海外からの旅行客が来ればお金が動き、雇用も創出することができます。モンゴル経済への恩恵は小さくないと考えています。
さて、コロナ禍前の2019年の観光客の内訳も見ておきましょう。
最も多かった中国人が全体の29%、次いでロシアの25%、韓国の17%と続き、観光業でも中国とロシアに依存していました。しかし、米国をはじめ日本などからの直行便が増えれば、この構図を変えることもできるでしょう。
ちなみに、2019年の日本からの観光客は2万4,419人と少なめですが、ドラマ効果もあって今後モンゴルへの観光客は増えるのではないでしょうか。
ここで少しだけ、モンゴルの観光スポットも紹介します。
牧草地やゲルのイメージが強いモンゴルですが、有名な観光地が数多く存在しています。
まず、首都ウランバートルの中心にある「チンギス・ハーン広場」(通称スフバートル広場)には、モンゴルの国会議事堂の役割を果たす政府宮殿や中央郵便局、労働組合などが並び、世界最大の帝国「元」の始祖であるチンギス・ハーンの像が置かれているなど、モンゴルを象徴するスポットからショッピングまで、さまざまな観光を楽しむことができます。
私のお勧めスポットは「テレルジ国立公園」です。この国立公園は、ウランバートルの中心地から北東に70キロメートルほどの場所にあります。
高山地帯で、山々に囲まれた自然豊かな場所で、さまざまな高山植物を見ることができる上、観光客向けのツーリストキャンプも用意されていることから、ゲルなどを使うモンゴルの伝統的な生活を体験することもできます。ただし、こういった観光地のゲルはホテル並みの環境が整えられていて、冷暖房も完備。日本でここ数年、話題になっているグランピングのような施設となっています。機会があればぜひ足を運んでみてください。
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日本は、モンゴルの最大の支援国だ
日本は長きにわたってモンゴル経済を支援してきました。1977年に日本政府によるモンゴルに対するODA(政府開発援助)が締結されて以降、発電所や通信設備、食肉・乳製品加工施設、60校近い学校や病院を建設するなど、モンゴル国民の生活に必要なインフラ整備を行ってきました。
モンゴルの基幹産業であるカシミアもそのひとつです。日本が生産工場の設計から製造のノウハウなどすべてを無償提供し、世界水準のカシミア製品を生産できるようになりました。このODAで立ち上げたカシミアメーカー「GOBI(ゴビ)」は、現在は民営化され、日本にも羽田空港第1旅客ターミナル内に店舗があるほか、ECでもその製品を購入することができます。
さらに、国内外からの玄関口として、経済発展への重要な役割を果たしている「チンギス・ハーン国際空港」も、日本の総力を挙げてつくられた施設のひとつです。
円借款の供与を通じて、建設工事からターミナル施設のテナント運営、顧客サービスなど、空港運営に必要な幅広い分野において支援したほか、運営についても、モンゴルの空港事業としては初めて民間企業に委託され、三菱商事や成田国際空港、羽田空港のターミナルビル運営を担う日本空港ビルデング、日本航空関連会社であるJALUXによる日本企業連合(出資比率51%)と、モンゴル国営企業が出資参画する企業(出資比率49%)が運営しています。まさに“オールジャパン”で臨むということです。
旧空港ではできなかった大型旅客機や貨物機の離着陸も可能な構造となっており、経済成長とあわせて旅客数や貨物量、航空便が増加したとしても対応することができるそうです。
その他、首都ウランバートルへの急速な人口一極集中に伴う大気汚染や交通渋滞などの都市問題を解消する技術指導なども行っており、2022年3月末時点の無償資金協力は1,254億円、円借款1,829億円、技術協力584億円と、総額で3,670億円近い支援です。
最後にもうひとつ。
日本がODAでモンゴルに架けた橋の名は「太陽橋」と名付けられています。
この橋は、モンゴル最大の鋼鉄製の橋梁であり、鉄道で分断されていた南北の市民の生活をつなぐ重要な橋です。実は、この橋の名はモンゴル語で日本を指す「太陽(nar)」。日本への感謝の想いが込められているように感じられます。