今、ガーデンに関わる人たちの間では、温暖化や病害虫の影響を受けない植物のセレクトや、手のかからないローメンテナンスな庭づくりを叶える優れた植物を求めて日々チャレンジが続いています。そんななか、アメリカに渡り世界で広く育てられている日本由来の宿根草が注目されています。その名前はアスター‘ジンダイ’。日本の宿根草界に突如現れた星、アスター‘ジンダイ’の由来の解明と初めての開花、そして今後のガーデンで期待される特徴などをご紹介します。

日本から海外に渡り、再び日本に戻り愛される植物たち


都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開されている「第2回 東京パークガーデンアワード」のコンテストガーデンで10月上旬、グラスの穂と共演するアスター‘ジンダイ’。撮影/松井映樹

今、私たちが季節の移り変わりを感じたり、眺めて癒やされたりする花や植物のなかには、日本から海外に渡って、新たな価値を見出されて世界各地で育てられているものが多く存在します。その代表的な植物には、アジサイやギボウシ、ツバキなどが挙げられますが、今年東京・神代で開花したアスター‘ジンダイ’(Aster tataricus ‘Jindai’)もその一つです。


海外で撮影されたアスター‘ジンダイ’。yakonstant/shutterstock.com

アスター‘ジンダイ’はニューヨークのハイラインや、イギリスのハウザー&ワース・サマセットなど、昨今注目される「ナチュラリスティック」デザインのガーデンで広く栽培され、欧米では定番品種の美しいアスターとして愛されています。


「第2回 東京パークガーデンアワード」のコンテストガーデンで多数のつぼみをつけるアスター‘ジンダイ’。

宮城県で「はるはなファーム」というナーセリーを営み、ガーデナーでもある鈴木学さんも、「ナチュラリスティック」で活躍する植物に魅了され、苗を集めてきました。そのなかで、どうしても入手ができなかった品種がアスター‘ジンダイ’でした。

「あきらかに日本のものと分かる名前でしたから、かつて日本から海外へと紹介された植物の一種だと思い、同業者や山野草関係の知人に聞いていったのですが、まったくといっていいほど手がかりがありませんでした」。

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イギリスの新刊書籍で見つけたアスター‘ジンダイ’の由来


『Planting the Oudolf Gardens at Hauser & Wirth Somerset』by Rory Dusoir, Foreword by Piet Oudolf, Photographs by Jason Ingram 出版/Filbert Press

その謎のアスター‘ジンダイ’の由来を解き明かす糸口を鈴木さんが見つけたのは、2020年に出版されたイギリスのガーデン「ハウザー&ワース・サマセット」の解説書『Planting the Oudolf Gardens at Hauser & Wirth Somerset』でした。

世界的に活躍するガーデン・デザイナー、ピート・アウドルフ氏が手がけた庭の新刊出版を心待ちにしていた鈴木さんは、胸を躍らせページをめくっていると、アスター‘ジンダイ’の解説に目がとまりました。そこにはなんと「アメリカのプランツマン、リック・ダーク(Rick Darke)氏が神代植物公園で見つけた」と記されていたのです。