急速に円安が進む中、日本は「安い国」という認識が諸外国の人たちの間で定着しつつあります。本記事では、15万人に「お金の最適解」を教えてきた三凛さとし氏の著書『金のなる本 誰でも再現できる一生お金に困らない方法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、日本経済の実情と日本人が見直すべき価値観について解説します。
急速な円安により日本は今や「安い国」?
昨今、急速に円安が進んでいます。諸外国の人たちの間では、「日本は治安がよく観光地がたくさんあるうえに〝安い国〟だ」という認識が定着してしまっています。
外国人観光客が訪れてお金をたくさん落としてくれるのはウェルカムですが、「安い国」という評価はありがたくないものです。為替レートが必ずしも、その国の国力を示しているのではないという見方もありますが、世界における日本のステータスが低下していることを私は肌で感じています。
私が小中学生時代、父親の仕事の関係でシンガポールに住んでいた頃、中国や韓国など他の東アジアの国の人たちの中で、日本人は特別視されているのを子ども心にも感じていました。
それがいいか悪いかは別として、日本人は他の東アジアの国よりも優れているという見方をされていたのです。日本人という理由でリスペクトされるし、お金持ちだと見なされていたように思います。
決して褒められたことではありませんが、現地にいた日本人の中にも「自分たちは特権階級だ」という意識がありました。我が国日本は経済大国であり、シンガポールのような発展途上国とは違うと思っていたのです。
ところが、今はどうでしょうか。立場が大逆転したと感じることも少なくありません。中国が日本を抑えてGDPが世界2位(1位はアメリカ)となり、日本は3位に後退しました。さらに内閣府の2024年2月の発表によると、2023年の日本の名目GDPはドイツに抜かれ、ランキングにおいてさらに順位を下げて4位に後退したことが明らかになったのです。
GDPとは、その国で1年間に生み出された製品やサービスの総和です。GDPを統計的に連続して見ることで、その国の経済規模の大きさの変化(成長度合い)がわかります。
この順位の後退は、単に円安の影響だけではありません。確かに円安はGDPのドル換算値を押し下げる要因となりましたが、より本質的な問題は日本経済の長期的な停滞にあります。いわゆる「失われた30年」と呼ばれる期間、日本経済は低成長が続いています。
一昔前であれば、日本経済の規模は他国と比べてかなり大きく、多少の円安があってもGDP順位が大きく変動することは考えにくかったでしょう。しかし、日本が停滞している間に、ドイツを含む他の先進国は着実に経済成長を遂げ、その差が縮まってきたのです。
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安さを優先することでお金との縁が薄くなる
日本はかつてアメリカに次ぐ世界第2位のGDPを誇っていましたが、このように近年では世界経済における存在感が弱まりつつあります。この状況は、日本経済が直面している課題の深刻さを浮き彫りにしています。
世界のGDPに占める日本の割合の推移も見てみましょう。1980年に9.8%だったものが、1995年には17.6%まで高まった後、2010年には8.5%とほぼ30年前の位置づけに戻っています。
日本は平成時代の約30年間、「デフレスパイラル」と呼ばれる状態でした。モノの価格が上がらないどころか下がっていくという経験を、30年間し続けたわけです。そのせいで、「安ければいい」という発想になりやすい傾向があります。
特に「お金がない」と思っている人は、現実的な問題としてモノの価格は安いほうが助かるので、品質よりも「安さ」を優先するようになります。実はその発想こそが、よりいっそうお金との縁が遠くなる要因になっているのです。
モノやサービスには「適正な価格」というものがあります。それにはあなたの労働も含まれます。安いモノやサービスを求め続けるということは、あなた自身が安く買いたたかれるのをよしとすることにほかなりません。
日本国全体で「安ければいい」という価値観を、少しずつ手放していく必要があります。
三凛 さとし