さまざまな男女の愛情と欲望が入り乱れる非日常空間・ラブホテル。
そのなかでも“廃れた”ラブホテルには、事情ある男女の怨念が渦巻くイメージがあるのではないだろうか。
もし廃墟となったラブホテルに足を踏み入れることになったら……。今回ご紹介するエピソードのように、心霊スポット並みの恐怖体験を味わうかもしれない。
◆国道沿いの廃墟ラブホで派遣バイト
今回は、学生時代の夏、派遣バイトとして廃墟となったラブホテルを訪れたという・宇野達也さん(仮名・25歳)の恐怖体験をご紹介しよう。
「4年前、当時大学生だった僕は、何度か派遣バイトを経験していました。派遣される場所はその都度変わるのですが、その日は国道沿いにある5階建ての廃墟となったラブホテルでの清掃業務でした。
その日のバイトは僕を含めて3人。他の2人も僕と同じ大学生のようで、親しみやすく安心しました。しかし、廃れたラブホはお化け屋敷のような薄気味悪さが漂っていて、みんなどこか緊張の糸が張り詰めていたのを覚えています」
◆仕事内容は新規オープンに向けた清掃
依頼主は年配の男性で、仕事内容はラブホテルの新規オープンに向けた清掃の仕事だと説明を受けたそう。
「依頼主の男性に連れられ、ホテルの中に足を踏み入れました。長期間放置されたことを物語るような、ほこりとカビの臭いが一気に鼻をつき、気分が悪くなるような不気味さ。この時点で、すでにみんな帰りたさMAXでした」
依頼主からはざっくりした簡単な指示があったのみで清掃作業開始。依頼主はロビーに腰を下ろしたままで、ほとんど監視する様子はなく、自由に作業を進められたという。
「『早く終わらせよう』と3人で1階の部屋から順番に清掃していくことになりました。最初は軽い雑談を交えながらスムーズに進めていたものの、上階へ進むと部屋の雰囲気は一変。何かが重く身体にのしかかるような違和感が強まっていきました。
上の階に上がれば上がるほど、なぜかまるで地下にいるようなアングラな空気感が強くなっていくんです。そして、最上階の5階に辿り着いて部屋を覗くと……中には見たこともないような器具が次々と現れました」
◆最上階に広がる“アングラ”な世界
宇野さんたちは、緊縛用のベッドやX字型の拘束台、手枷足枷付きの椅子など、見たこともない異様な光景に圧倒されたという。
「僕たちは恐怖心も強かったものの感覚がマヒしてきていて、一体これは何に使うんだ? と興味も沸いていました。思わずふざけて写真や動画を撮り始め、僕はその映像を友人や当時付き合っていた彼女に送ったんです。
友人たちは『面白いバイトだな』と笑ってくれたんですが、彼女からの返信は少し違っていて……『なんか不気味だね、気をつけた方がいいんじゃない?』と来ました。
その文面を見た瞬間、僕は我に帰りました。見たこともない器具の数々に興奮して一瞬忘れていましたが、ここは埃まみれの廃墟ホテルです。しかも、よくよく目を凝らして見ると、床には血の跡のような大きなシミも広がっていて…とにかく異様で恐怖心がまた増しましたね」
◆この廃墟ホテルで起きていた事件とは
その夜、無事に帰宅した宇野さん。けれど、あのラブホテルのことがどうしても頭から離れず妙に気になったため、ネットで調べてみると衝撃の事実が明らかになったそうだ。
「……あのラブホ、過去にカップルが宿泊していたはずの部屋から女性が変死体で発見され、男性は行方不明になった事件があったようなんです。背筋が凍りついた僕は、バイト仲間にもこの事実を伝えることができず、彼女にも言えず、一人でその恐怖を抱え込むしかありませんでした。
振り返ってみると、廃墟ラブホテルで感じた、“何かが重く身体にのしかかるような違和感”って……! いや、もう考えないようにします。ラブホテルは霊が出るという噂は耳にしたことがあったのですが、まさか自分がそんな場所に足を踏み入れることになるとは思いもしませんでしたね」
今でも夏の夜になると、宇野さんはあの日の廃墟ラブホで目にした器具の数々や血の跡のようなシミが脳裏をよぎり、強烈な鳥肌と嫌な冷や汗が大量に出るという。
<取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio>
【逢ヶ瀬十吾】
編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。興味のあるジャンルは映画・ドラマ・舞台などエンタメ系全般について。美味しい料理店を発掘することが趣味。