気持ちの赴くままに足を踏み出し、そこから始まる物語を紡ぎ続けている人がいる。映画『0.5ミリ』の撮影をきっかけに高知県に移住した安藤桃子さんだ。安藤さんが高知へ移住してから行なったことは、わずか10年とは思えないほど多い。映画館の立ち上げや映画祭開催など、アグレッシブに動き続ける安藤さんを刺激する、自然、街、人とは何なのか。安藤さんにアシックスウォーキング「PEDALA SPORTS」を履いて高知を案内してもらった。
自然に抗わず、自然に抱かれる。仁淀ブルーを歩く
「すっごく、いいお天気ですね!」
そう言いながら待ち合わせ場所に現れた安藤桃子さんは、お日様のような笑顔で迎えてくれた。今日は「日本一の清流」「仁淀ブルー」とたたえられる仁淀川沿いから高知市内まで、安藤さんのお気に入りのロケーションを案内してもらう予定だ。
最初に案内してくれたのは仁淀川にかかる〈名越屋沈下橋〉。山に向かってまっすぐ延びる橋の下には、青く透き通る水が流れ、何匹もの川魚が泳いでいるのが目に入る。ここが高知市内からわずか1時間の距離だとは思えないほどの大自然だ。
「この橋は、その名のとおり増水したら川に沈んでしまうように設計された欄干のない橋なんです。水が増えたら沈ませて、水が引いたらまた渡れるようになる。自然に抗わず、寄り添っていく姿勢が、日本人の感性の象徴のように感じられるんですね。自然に入り込むように作られているから、この橋の上に立つと自然に抱かれる感覚になるんです」
だから、ここから案内をスタートしたかったと言う安藤さんとともにしばし深呼吸。心がほぐれたところで、次は安藤さんがよく訪れるという〈土佐和紙工芸村くらうど〉の前にある河原へ案内してもらった。
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母のおなかに帰ってきたような安心感。高知だから感じられる“懐かしさ”
「早速行ってみましょう」。そう言いながら川に向かう道を進むと、通りがかりの犬の散歩をしている女性から「あら! 安藤さんじゃない」と声が掛かる。天気のことや犬のことなど、しばらく話をしてから安藤さんが「お体に気をつけてねー」と別れを告げる。
「お知り合いですか?」と聞くと「全然(笑)。高知の人って、あんな感じでみなさん話しかけてくれるんです。あれ?知り合いだったかな、なんて思っちゃう(笑)! そのままその人のお宅で麦茶をいただいたり、野菜をいただいたり。こんなところが高知!って感じがしてたまらないんですよ」と笑う。
広い河原につくと、遠くに水遊びする人たちの姿が見える。人工的なものはほとんどなく、目の前にはゆったりと青く流れる水と濃い緑の山がこんもりと茂っている。
「ここいいでしょう? ここは、事務所で根を詰めて仕事して疲れたーってときに、来るんです。子どもや友達と一緒にコンビニでコーヒーや飲み物買って、車のトランクを川に向けて停めて。そのままトランクに腰掛けてこの雄大な景色を見てね。それだけで、もう最高に幸せです」
高知へ移住したのは2014年。安藤さんが書き下ろした小説『0.5ミリ』を映画化するにあたり高知に訪れ、移住を決心したという。
「仕事柄、日本中に行ったことがありましたが、47都道府県のなかで唯一来たことがなかったのが高知でした。映画の撮影地を探していたときに、原作を読んでいた父(俳優・映画監督・画家の奥田瑛二さん)が『この主人公がいるのは高知しかない』と勧めてくれたんです」
「それを聞いてすぐに予定を調整して、高知に行くことにしました。午前中に飛行機を降りるとすぐにここだ! と思いました。自然がパワフル、人があったかい。そして、海外に行ったときのような開放感を感じられて、でもなぜか懐かしさもあって……。特別な空気感が大好きになり、一瞬で移住を決意しました。最近は、高知から離れて戻ってくるとお母さんのおなかに帰ってきたような安心感があって、おかえりって出迎えてくれるような気がするんですよ」