気持ちの赴くままに足を踏み出し、そこから始まる物語を紡ぎ続けている人がいる。映画『0.5ミリ』の撮影をきっかけに高知県に移住した安藤桃子さんだ。安藤さんが高知へ移住してから行なったことは、わずか10年とは思えないほど多い。映画館の立ち上げや映画祭開催など、アグレッシブに動き続ける安藤さんを刺激する、自然、街、人とは何なのか。安藤さんにアシックスウォーキング「PEDALA SPORTS」を履いて高知を案内してもらった。
善悪ではなく、自然か不自然かで判断するという生き方
仁淀川に沿って進んで行くと、川幅はどんどんと広くなり、街と海が少しずつ近くなってきたのを感じられる。川から離れ、海のそばの山を登って行くとこんもりと緑が茂るなか近代的な建物が見えてきた。「日本の植物分類学の父」といわれる牧野富太郎博士の業績をたたえて開園した〈高知県立牧野植物園〉だ。
「牧野富太郎さんは、生涯をかけて日本中を歩いて雑草といわれるような植物にも名前を付けていかれました。 “名付ける”という行為は、存在を認めて愛のまなざしを向けているように感じられます」
石垣沿いのむせかえるような緑の小道に入ると、安藤さんがスマートフォンでシャッターを切っている。
「この道はお遍路さんが歩く遍路道ですね。四国では遍路道がいたるところにあって、この植物園にも残されています。こういう道が残されているのも素晴らしいですよね。植物園を建てた建築家の方が『建てた時点ではまだ未完成。植えられた植物が成長して、建物と一体化することで建築も完成する』とおっしゃっていたのを聞いたことがあります。だから山とのボーダーがなく、歩いているとキツネやサルに会えたり、ネコがのんびり歩いていたりする。その環境がとっても平和で、ここに身を置くだけで心地よくなります」
植物園を出ると「仁淀川もそうですが、もう一つ、あの『竜とそばかすの姫』の舞台になった場所があるからちょっと行ってみましょうか」と安藤さんが誘ってくれた。鏡川にかかる〈天神大橋〉は、朱色の欄干が風情ある趣で、その下をまたゆったりと川が流れている。
「今日、このルートを選んだのは山と川、海、街や人が全部つながっているのを感じてほしかったからなんです。自然とつながり自然のままにあることは、生きやすさにも通じると感じています。社会で生きて仕事をしていたら、どうしても“いい”“悪い”で判断しがちですが、そうしていると苦しくて生きにくくなる。だから自分にとって自然か、不自然かという判断基準を持っていて、自然と不自然の間がグラデーションになっている感覚があるといいなと思って。そういうイメージでこのロケーション、道のりを選びました」
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歩くことは夢に近づくこと。いつも一歩一歩“かなえている”ことを子どもたちに伝えたい
ラストのロケーションは、高知市の繁華街おびさんロードにある映画館〈キネマミュージアム(キネマM)〉。安藤さんが「映画で高知を盛り上げたい」という思いで作った場所だ。到着すると「ひと息つきましょう」と言って、併設のカフェで出しているクラフトコーラをご馳走になった。これまで飲んだどのコーラとも違うハーブのような味わいは、一日歩いた体にはひどくおいしく感じられる。
「わたしが友人たちと共に土佐の山や自然に入って採ってきた30種類の野草が入っているんです。映画館のオープンに向けて動いているときはコロナ禍で、命の尊さを改めて感じていた時期でもありました。この場所に来たら、癒やされてほしい。そんな思いで、ドリンクから音響や床材などの映画を見る環境まで、いのちに優しいをコンセプトにこだわり抜いて作り上げました」
「ミュージアム」と名付けたように、単なるミニシアターではなく、映画を通じた文化を発信する活動も行われている。
「昨年は映画祭を開催しました。映画祭っていうと、みんな身構えちゃうので『坂本龍馬祈願国際映画祭り』という名前にして、高知の人たちが大好きなお祭りにしたんです。映画関連でいうと、いま力を入れているのはNPOに参加して開催している、子どもたちに映画作りをしてもらうワークショップです。1回でも参加すると全員が、見違えるように自分が持っているものを開花させていくんです」
「子どもたちと接しているときに一番伝えたいのは“夢をかなえよう!”ということ。実はみんな日々たくさんの願いをかなえて生きている。例えば、歩くことだって、学校へ行こう、会社へ行こうと思って、自分の足を踏み出して、目的に一歩一歩近づいている。自分が自分にかなえてあげられているんだ! という実感を持ってほしいと思います」