男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:千代田区・番町出身のお嬢様28歳と温泉旅行。1泊2日の後、女の態度が急変したワケ
僕には、最初から無理だったのだろうか。
知り合いの紹介で知り合った、理子。とにかく僕のタイプで、たぶん全人類から見て綺麗で可愛い子だと思う。
しかも今年で27歳だという理子は、まだ若いから、ある意味無双状態だ。
そのうえ、ナースという国家資格まで持っている。現在は美容皮膚科に勤めているらしいけれど、SNSを覗くと、それはもう信じられないくらいキラキラしていた。
その一方で、いたって普通のサラリーマンの僕。一応名だたる大企業の社員ではあるけれど、年収は今年30歳で頑張って1,000万だ。
手取りにすると、大体月で60万円程度となる。
理子の理想には、はるかに遠いのはわかっている。でも、僕なりに頑張った。
しかし1回はデートに漕ぎつけられたのに、結局2回目はまだだ。年収1,000万だと、東京では婚活市場の土俵にすら上がれないのだろうか…。
Q1:女が男からのデートの誘いをOKした理由は?
理子と出会った食事会で、僕は衝撃を受けた。小柄だけれど、意志が強そうな感じに、とにかく抜群に可愛い顔立ち。
僕の友人も、最初は正直理子狙いだったと思う。
しかしたまたま隣に座れて距離が近かったせいか、僕は理子とたくさん話すことができた。
「理子さん、本当に可愛いですね…お仕事は、何をされているんですか?」
「本当ですか?ありがとうございます。看護師なのですが、今は美容皮膚科に勤務していて」
「だからそんなに肌が綺麗なんですね!」
「え〜嬉しい♡」
“高嶺の花”とは理子のような女性のことをいうのだろうなと思った。
しかも話をしていくと、最近彼氏と別れたらしい。
「え!?理子さん、2週間前に別れたんですか?」
「そうなんですよ。なので次の人を絶賛募集中です」
別れた恋人を「男性は別フォルダ保存、女性は上書き保存」とはよく言うが、まさにそんな感じだろうか。
別れたばかりだというのに、理子はかなりアッサリとしている。
「“寂しい”とか思わないんですか?」
「寂しいですけど…でも仕方ないですよね。合わなかっただけのことですし」
見た目とは裏腹に、意外にサバサバとしている理子。そこも魅力的だった。
「恭平さんは?今、お付き合いしている方とかいらっしゃるんですか?」
「僕は去年別れて以来、彼女がいなくて。次は結婚だと思うと、なかなか…」
「そうですよね。慎重にもなりますよね」
恋愛の話をして、さらに距離が縮まる。
お酒も入ってきたせいか、2軒目へ移動した際に、僕はかなり本気で言葉を伝えていた。
「俺、マジで理子さんタイプです。色んな人から言われてるとは思いますが…」
「本当ですか?嬉しいです。ちなみに、どういう人がタイプなんですか?」
「いや、本当に理子さんみたいな、可愛らしいのに芯がある人が好きです」
すると、ふふっと笑った理子。
「恭平さんって、面白いですね」
「そうですか?ちなみに理子さんは、どういう人がタイプなんですか?」
「私はそうだな…優しい人、ですかね」
ものすごくざっくりなタイプだったけれど、僕はそれ以上踏み込めなかった。
そして翌日。ダメ元で理子をデートに誘ってみると、なんとOKがもらえたのだ。
Q2:女がデート中に考えてしまったことは?
緊張の初デートの前に、いくつかの問題が立ちはだかる。理子のインスタのアカウントは比較的すぐに見つかったのだが、投稿を覗いて、一方的に少し落ち込んでしまった。
理子のアカウントは想像以上にキラキラで、下手なお店に連れて行ける感じではなかったから。
「これはどうすれば良いのだろうか…」
結局、グルメな友人に聞きまくり、店は中目黒にある、ビブグルマンを獲得したこともある和食居酒屋『ひぐらし』にした。
「素敵なお店!初めて来ました♡」
「良かった〜。理子さんをお連れするお店、どこが良いのか本当にわからなくて。かなり頑張って探しました」
「お店選び、大正解じゃないですか」
理子が喜んでくれる様子を見て、ほっと胸を撫で下ろす。店選びは間違いなかったようで、僕は教えてくれた友に心の中でひたすら感謝をする。
「まさか理子さんがデートをOKしてくれるなんて、思っていなかったです」
「そうですか?」
「引く手数多でしょうし…。僕で大丈夫でした?」
「もちろんですよ。じゃないと、こうやって来ませんし」
僕の何が刺さったのかよくわからなかったけれど、とりあえずこうして、まずは初デートに漕ぎつけられただけでも大きな一歩だ。
だからこのチャンスを逃すまいと、僕は理子ともっと深い話をしようと決めていた。
「理子さん、前は優しい人がタイプって言っていましたけど…。もし聞いて良いなら、前の彼氏さんとかは、どんな感じだったんですか?」
人のプライベートにズカズカと入るのは申し訳ないなと思ったけれど、気になってしまう。もし理子が良いなら、参考までに聞いておきたい。
すると理子はすんなりと答えてくれた。
「年は35歳で、経営者でした。最初は良かったんですけど、女関係がルーズで。それに耐えられなくて、別れたんです。だから次の人は、優しくて誠実な人がいいなと」
「そうですか…でもやっぱり、経営者とかなんですね」
「彼が、美容クリニックを経営していて。だから出会ったんです」
誠実さは自信がある。浮気もしない。でも理子の理想の男性になるには、一体年収はいくら必要なのだろうか。
美容クリニックの経営者の年収なんて、想像すらできない。他では味わえないような、上質な魚を使ったアテを食べながら、僕は思わず料理に視線を落とす。
「めちゃくちゃ稼いでそうですね、その元彼氏さん」
「まぁ…それなりに」
「僕、誠実です!でも年収が……。本当に、ただの一般サラリーマンなので」
「そんなの関係ないですよ。でも、もし興味本位で聞いて良いなら…。いくらくらいなんですか?」
「年収1,000万くらいです」
「すごいじゃないですか」
理子の優しさで「すごい」とは言ってくれたけれど、たぶん理子の周りには、年収2,000万以上…いや、それ以上に稼いでいる人たちなんてたくさんいるだろう。
「理子さんが、相手に求める最低条件と言いますか…最低年収みたいなものってあるんですか?」
「一応ありますけど…。“それなりに”、ですかね」
“それなり”とは、なんて難しい言葉なのだろうか。
“それなり”は人によってだいぶ違うだろうし、何を基準にして判断すれば良いのかわからない。
「理子さんの求める年収は、絶対高いですよね。年収1,000万だと厳しそう」
「そんなことないですよ〜」
理子の言い方からして、“そんなことある”感じだった。
結局、年収の話をした途端になんとなく尻つぼみになり、この日は1軒で解散となってしまった。
この東京では、年収1,000万だと恋愛の土俵にすら上がれないのだろうか。理子のような、東京のど真ん中を生きるキラキラ女子から、僕の存在は見えてすらいないのだろうか。
デートを終え、ひとり東京の夜空を見上げてみる。
どんよりと曇っていて星なんて見えない東京の空。そんな空を、若干恨めしく思いながら、どうしようもない気持ちを抱えてため息をついた。
▶前回:千代田区・番町出身のお嬢様28歳と温泉旅行。1泊2日の後、女の態度が急変したワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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女が求めている“それなり”とは?