元セクシー女優は“普通の仕事”に転職できる?5年前に退会したはずの転職エージェントから“まさかの連絡”が

 元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半が経過したところで引退を決意し、現在は同人作品やセクシービデオの脚本など、あらゆる方面で活躍中。

◆女優引退後に登録した“しつこすぎる”転職エージェント

「もう電話しないでください。転職しないんで」

 これは筆者が約5年前に転職エージェントへ言い放ったトドメの一言である。

 以前、「元セクシー女優は“普通の仕事”に転職できるのか」といった、昼職への転職体験記を連載していた。その連載のある回に、とある転職エージェントの担当者とバトルしたときのことをことを書いたのだが、それから約5年が経った今、まさかの進展があったので紹介していこう。

 まずは当時のことを簡単に振り返ってみる。女優を引退して転職活動を始めたとき、登録したエージェントで、めちゃくちゃしつこい会社があった。登録時は応募可能な会社が2件しかなかったにもかかわらず、その後自力で探したゲーム会社への入社が決まった旨を伝えると、急激に手のひらを返す。職場が決まった矢先に「転職のご予定はございますか」と猛プッシュが続いて、熱心な営業力に感心した私は冒頭のセリフを言い放ち、退会手続きを進めたはずだったのだが……。

◆突然のフリーダイヤルからの着信

 それから約5年が経った、つい先日のこと。突然まったく知らないフリーダイヤルの番号から着信があった。私はアドレスに入っていない人からの電話は基本的に出ず、なんなら番号をインターネットで調べるタイプだ。

 まず前提として、0120から始まるフリーダイヤルが知り合いなわけないだろう。なんの業者かと思って検索すると、見覚えのある企業名が出てきた。そう、グイグイ営業でこちらの気分を天から地まで叩き落とした転職エージェントである。

 エージェントの名前を仮にA社としよう。A社はご丁寧に留守番電話にメッセージまで残しており、内容は「仕事を探しているなら案件があるから、掛け直してきて」みたいな簡潔なものだった。

 ちなみに電話の主は前回の営業担当・A氏ではなく、まったく違うお姉さん。あれだけ突っぱねたのにしれっと連絡を入れてくるなんて、この会社は本当にたくましい。と、いうか退会手続きをしたはずなのに……なぜ?

◆「元セクシー女優VS転職エージェント」再勃発

 ここまで熱心だと苛立ちを通り越して面白さを覚えるレベルなので、ここで無視せず返事をしてみたらどうなるのかを検証したくなった。とりあえずコールバックをしなければ何も話が始まらないため、少々ニヤつきながら折り返すとまさかの2コールで応答開始。速い、速すぎる!

 あまりのスピードにびっくりしたものの、序盤でビビり倒してはならない。私は「あの、お電話いただいておりました、たかなしです。仕事を探しているので、一度お話を伺いたいのですが」と、わざとらしいセリフを吐いてみる。

 対応はとてもスムーズで、履歴書と職務経歴書、希望条件を至急メールで送って欲しいとのこと。現在は案件のジャンルも幅広く用意しているため、マッチング成立までサポートをすると電話口のお姉さんは力強く答えてくれた。

 電話はものの2分程度で終了し、通話終了とともに爆速で「早よプロフィールと希望をこちらに送れ」みたいな圧が強い内容のメールが到着。「また履歴書と経歴書を送らなきゃならないのかよ」と思ったけど、登録時から数年以上経過しているのだからこれは仕方がない。せっかく爆速でメールをくれたのだから、同じ速度感で対応をする。

 ……と、ここでパタっと連絡が途絶えてしまい、「少々お待ちください」等の返信もないままその日が終わった。

◆悪徳サイトへの誘導のような返信が


 爆速返信から2日経っても返事が来ないため、私は電話口のお姉さんに対して「君も結局、A氏と同じなんだね」と別れ際の捨て台詞みたいな感想を抱いていた。ガツガツするのに、急にツンとするなんてまるで猫のようで、気になっちゃうじゃないか。まさかこれがA社のマニュアルだったら、自分はまんまと引っ掛かっているわけだけれども……。

 そして爆速返信から3日半くらいが経過した頃、ようやくA社からメールが届く。送り主は電話で話したお姉さんではなく、なんとまた別の人だ。

 メールを恐る恐る開くと、どうやら現在は応募者殺到により、再カウンセリングの時間が取れないらしい。そして「いまウチでやってる系列があるから、まずはお仕事マッチングサイトに登録して」といった、たらい回しかつ悪徳サイトへの誘導かと思うような内容が目に飛び込んできた。これは案件紹介以前の問題だと思ってしまう。

 文章を読み終わった頃には数年前にA氏に対してイライラした時の感情が復活し、気軽に連絡を入れた自分を殴りたくなった。

◆熱心すぎる営業の狙いは?

 これで返事をしなければ全てが終わると思ったけど、そう簡単に許してはくれないのがA社。熱烈アピールは今回も相変わらずで、営業お姉さんから再び着信+メールが届いた。

 内容を要約すると「職務経歴書をもうちょっと詳しく書いて。あとポートフォリオもくれ。案件を精査したいから」とのこと。一体この前の系列サイトへの誘導はなんだったのだろうか……。おそらく、こちらの件については登録者増やしが狙いで、本来の案件探しとはまた別ルートを走っているに違いない。

 軽い気持ちで相手のフィールドに飛び込んだが、見事なまでに私の完敗である。あの熱心さには絶対に勝てない。もちろんいまだに着信+メールのコンボを喰らわされているため、この記事が書き終わった後に折り返して「ゴメンナサイ」しようと思う。

◆この転職エージェントから学んだこと


 そんなこんなで、元セクシー女優VS転職エージェントとの戦いは終了した。本当にここの社員教育は素晴らしく、どの人も一生懸命で対応の仕方に一貫性がある。がめついと言えば一言で終わりかもしれないけど、「ま、いつでもどうぞ」のような受け身の態度より「どうですか?ぜひ!」と少し前のめりな方が、人の心は動きやすいのかもしれない。

 最近の私はガツガツすることをだいぶ忘れていたため、また転職エージェントから学びを得たのである。ちゃんと案件を紹介してもらったことは一度もないけれど、毎回何かしら得る者が大きいので、ある意味A社には感謝せねばならない。彼らは野心を再確認させてくれる、非常にベストな存在だった。

 だがしかし、もうこちらからの“学び”はお腹がいっぱいなので、本格的に退会をしよう。そうでないとまた営業をされるたびにニヤニヤして、応戦する→叩きのめされるのを繰り返しそうな自分がいるから……。

文/たかなし亜妖

―[元セクシー女優の昼職転職記]―

【たかなし亜妖】

元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。