ミネラル豊かで人気のエトナに注力
シチリアの各地に畑を持つドンナフガータが、特に注目している産地がもう一つある。それはエトナだ。ヨーロッパ最大の活火山であるエトナ山の麓(ふもと)に広がるエリア、火山性の砂質土壌からフレッシュでミネラルに富んだエレガントなワインが生まれる。
ドンナフガータの畑はエトナ山の東側のエリアに位置し、白はカッリカンテ、赤はネレッロ・マスカレーゼとネレッロ・カップッチョを栽培している。エトナに所有する8区画の中で、今回はモンテラグアルディアとスタテッラという区画を訪れた。モンテラグアルディアはミネラル豊富で肥沃な土地で、細かい砂質土壌のために雨が地下に染み込みやすい。標高700メートルほどの高地に位置し、冬や夜は冷えるが、地中海の影響を受けるため気候は比較的穏やかだ。シチリアの太陽と低い気温によってフレッシュで酸を備えたブドウが出来るという。
ここではアルベレッロという伝統的な仕立てが行われている。枝を長く伸ばすコルドン方式に比べ、アルベレッロのほうがすべてのブドウに栄養が均等に届きやすくなるそうだ。
同じ火山性土壌のパンテッレリアとの大きな違いは「エトナのほうが土中にミネラルや水分を多く含んでいます。パンテッレリアは年間降水量が400~450ミリリットルと雨の少ない地域で土中の水分量もあまりなく、1ヘクタール当たり2500本ほどしかブドウ樹を植えません。エトナの降水量はパンテッレリアのおよそ2倍なので、より密植させることができ、1ヘクタール当たり6000~7000本を植えています」とパレルモ氏。
スタテッラは溶岩石がごろごろと転がっているのが特徴的だ。ブドウ樹は石の隙間を見付けながら根を張っていくので広く深く根を張ることができ、より地下の水にアクセスしやすくなるそうだ。特に白ワインに適した土壌で、ここではカッリカンテを栽培している。第1アロマは控えめな品種だが、熟成が進むと複雑になるため、長期熟成タイプのワインに適した品種だという。エトナのカッリカンテ主体の『スル・ヴルカーノ・ビアンコ』は、白い花の香りで、キリッとした酸味が感じられる。アフターの塩っぽいミネラルが、ボッタルガ(*3)を使った料理とマッチした。
*3 カラスミ。ボラまたはマグロの卵巣を塩漬けにして干したもの
エトナ・ワインは特にアメリカでの人気が高く、今後さらに注力していく予定だという。
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海にやさしいクロージャーを世界で初めて採用
ワインの質の高さはもちろんだが、それ以外にも注目したいのが、ドンナフガータが手掛けるさまざまなプロジェクトだ。
サステイナビリティーにも取り組む同社は、海岸地域で回収されたプラスチックを原料に作られたワインクロージャー(*4)「ノマコルク・オーシャン」を世界で初めて採用した。10年前からリサイクル可能なクロージャーを探していたところ、ワイン用クロージャーを手掛けるドイツの「ヴィンヴェンションズ社」から声がかかり、2年前からこのプロジェクトをスタート。パンテッレリアのジビッボで造られる『リゲア』は、2023年ヴィンテージからノマコルク・オーシャンを使用し、ボトルも軽量化した。
*4 ワインの瓶口の栓。天然コルクや合成コルク、スクリューキャップなどさまざまなタイプがある
「このほかにも、海を守る活動として、シチリア近海のプラスチックごみの回収イベントを独自で行っています。こうした活動をさらに展開していきたいと思います」とアントニオ氏。
2年前に6代目としてワイナリーに参画した、ジョゼさんの娘であるガブリエラ・ファヴァーラさんは「次の世代に引き継ぐためには、さまざまな活動を続ける必要があります。その中でも、生物多様性、環境保護、土着品種に特に力を入れていきたいと思っています」と、次世代を担う一人として未来を見据える。