今週のテーマは「年収1,000万だと東京では相手にもされないのか?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:東京だと「年収1,000万・手取り月60万男」は結婚対象外?30歳日系サラリーマンの苦悩
中目黒の駅前で恭平と解散し、スマホで時間をチェックしてみる。
「まだ22時半か…」
「今日は2軒目にも行くのかな?」と思っていたけれど、結局1軒目で解散となってしまったため、意外にも時間がある。
「電車で帰る」と言った恭平に対し、「そこはタクシーじゃないんだ…」と思った私は、東京に染まってしまったのだろうか。
まだ飲みたい気分だったので、飲んでそうな友人に何人か連絡をしてみた。するとすぐに「西麻布で飲んでるよ」と返信が来たので、私は駅前でタクシーを拾った。
「すみません、西麻布交差点のほうまで」
そう運転手さんに伝え、車の窓を開けてみる。すっかり秋本番になった東京。ヒンヤリと冷たい風が、私の頬を撫でていく。
恭平はいい人だし、誠実だと思う。でも今日のデートで、「やっぱり違うのかな」という思いと、何よりも将来への不安が生まれてきてしまった。
A1:グイグイと来てくれて、褒めてくれるのが嬉しかった
恭平と出会ったのは、食事会だった。まったく期待せずに参加したのだけれど、実際に会ってみると男性二人とも優しくて感じの良い人たちで、意外にもかなり盛り上がった。
しかも、隣に座った恭平は、最初から勢いよく私のことを褒めてくれた。
「理子さん、本当に可愛いですね…お仕事は、何をされているんですか?」
「本当ですか?ありがとうございます。看護師なのですが、今は美容皮膚科に勤務していて」
「だからそんなに肌が綺麗なんですね!」
「え〜嬉しい♡」
褒められて、嫌な女はいない。
“褒められ慣れている”か否かは関係ない。とにかく、女性は褒められると嬉しくなる。
しかもタイミング的に、彼氏と別れたばかりだった私は、褒め称えてくれる恭平に興味を持った。
「え!?理子さん、2週間前に別れたんですか?」
「そうなんですよ。なので次の人を絶賛募集中です」
「“寂しい”とか思わないんですか?」
「寂しいですけど…でも仕方ないですよね。合わなかっただけのことですし」
元カレは、美容クリニックを経営しており、お金持ちではあった。しかし女関係が最悪で、私は耐えられなくなって別れを選んだ。
その決断を、後悔はしていない。「何かを捨てれば、新しい何かが手に入る」とはよく聞く話だから。
「恭平さんは?今、お付き合いしている方とかいらっしゃるんですか?」
「僕は去年別れて以来、彼女がいなくて。次は結婚だと思うと、なかなか…」
「そうですよね。慎重にもなりますよね」
それに加えて、元カレは平気で「結婚なんて縛られる制度、時代遅れだ」とか訳のわからないことを言う人で、結婚はできないと悟っていた。
でも私は結婚がしたい。
だから、恭平の誠実そうな雰囲気と、結婚に対して多少なりとも意思があるところが、いいなと思った。
さらに1軒目から2軒目へ移動しても、恭平は変わらず私に熱視線に似た、ラブコールを送り続けてくれた。
「俺、マジで理子さんタイプです。色んな人から言われてるとは思いますが…」
「本当ですか?嬉しいです。ちなみに、どういう人がタイプなんですか?」
「いや、本当に理子さんみたいな、可愛らしいのに芯がある人が好きです」
元カレで、自尊心が酷く傷付けられていたからだろうか。
それとも、単純に恭平に惹かれたからだろうか。
恭平の言葉ひとつひとつが嬉しくて、私は思わず笑顔になってしまった。
「恭平さんって、面白いですね」
「そうですか?ちなみに理子さんは、どういう人がタイプなんですか?」
「私はそうだな…優しい人、ですかね」
― この人だったら、私のこと大事にしてくれそうだな…。
そう思った。だから翌日、恭平から食事の誘いが来た時、私はすぐにOKした。
A2:“勝手に自爆した”と思った
そして恭平との初デートの日。何度か、「何が食べたいですか?」などのやり取りを経て、彼が選んだお店は中目黒にある和食居酒屋『ひぐらし』だった。
「素敵なお店!初めて来ました♡」
「良かった〜。理子さんをお連れするお店、どこが良いのか本当にわからなくて。かなり頑張って探しました」
「お店選び、大正解じゃないですか」
カウンター席というのも良かったし、何より肩肘張らずに楽しめる感じが良いなと思った。
今日のデートをそれなりに楽しみにしていた私。しかしデートが始まってすぐ、微妙なザワつきを覚える。
「まさか理子さんがデートをOKしてくれるなんて、思っていなかったです」
「そうですか?」
「引く手数多でしょうし…。僕で大丈夫でした?」
「もちろんですよ。じゃないと、こうやって来ませんし」
「僕で大丈夫でした?」という質問を、デート相手にするだろうか。
確かに、私はモテる。ハッキリ言って、引く手数多でもある。顔面偏差値も高いという自負があるし、27歳という年齢もまだ武器にはなる。
おかげでデート相手には困っていないけれど、本当に興味がない人だったら、そもそも食事になんて行かない。
今日この場にいることがアンサーでもあるのに、なんだか恭平はウジウジしている。
とりあえず気にせずに食事を進めてみるけれど、恭平は私の元カレのことが気になって仕方ない様子だ。
「理子さん、前は優しい人がタイプって言っていましたけど…。もし聞いて良いなら、前の彼氏さんとかは、どんな感じだったんですか?」
「年は35歳で、経営者でした。最初は良かったんですけど、女関係がルーズで。それに耐えられなくて、別れたんです。だから次の人は、優しくて誠実な人がいいなと」
美味しいアテを食べながら包み隠さずと答える私もどうなのかと思ったけれど、真実だから仕方ない。
「そうですか…でもやっぱり、経営者とかなんですね」
「彼も、美容クリニックを経営していて。だから出会ったんです」
元カレのことを聞かれるのはまったく厭わない。この先に関係を進めるなら、お互いの恋愛観や、別れた理由などを知っておくのは大事なことだから。
しかし恭平の場合、それとは違う意味も含まれていたらしい。
「めちゃくちゃ稼いでそうですね、その元彼氏さん」
「まぁ…それなりに」
そう言うと、急に自分の年収の話を始めた恭平。
「僕、誠実です!でも年収が……。本当に、ただの一般サラリーマンなので」
「そんなの関係ないですよ」
そうは言いながらも、最低限の年収は必要だし、東京で暮らすにはお金がかかる。
私もただの美容皮膚科のナースだし、良い暮らしを求めるならば、年収2,000万以上は必須なことも知っている。
でもそれをどこまで求めるか?私的には、「年収1,000万くらいあればいいなー」という感じだった。
「でも、もし興味本位で聞いて良いなら…。いくらくらいなんですか?」
「年収1,000万くらいです」
恭平は、大手企業で働いていて年収1,000万は、むしろ「想像していたより稼いでいるな」と思った。
ただ、恭平の中でそれくらいのレベルだと“私には見合わない”と勝手に判断したようだ。
「理子さんが、相手に求める最低条件と言いますか…最低年収みたいなものってあるんですか?」
「一応ありますけど…。“それなりに”、ですかね」
― 恭平と付き合って、もしこの先結婚したら、きっと大事にしてくれるだろう。優しいし、誠実で良い家庭を築けそう…。
そう思っていたのに、勝手に自爆し始めた恭平。
「理子さんの求める年収は、絶対高いですよね。年収1,000万だと厳しそう」
男性は、自信があるほうが絶対にモテる。
根拠のない自信でも良いし、「今はダメかもだけど、必ず幸せにするし、将来性を見て欲しい!」でも何でもいい。その勝手な自信に、女は男らしさを感じることもある。
ただその一方で、こちらは何も言っておらず、何もしていないのに、勝手に自爆していく男性もいる。
そして何よりも。
年収1,000万くらいあればいいと思っていたけれど、恭平が勝手にジャッジしたことで、「年収1,000万って、そんなに生活できないの?」と私は思い始めてしまった。
― 年収1,000万って…。東京だとやっぱり微妙なのかな。
結局一緒にいる将来も見えず、自分の求める条件もわからず、私は何となく連絡を取るのをやめた。
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