―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―
◆国民的RPG『ドラゴンクエストIII』が蘇る!
11月14日に『ドラゴンクエストIII』のHD-2D版が発売されます。スクウェア・エニックスが『オクトパストラベラー』(2018年)で開発した、ドット絵と3DCGが融合したグラフィック表現「HD-2D」で、不朽の名作はどう生まれ変わるのか? 注目度も高く、年末商戦の目玉となりそうです。
というわけで、今回は『ドラゴンクエスト(以下、DQ)』を筆頭に80年代後半にファミコンで発売されたコマンド式RPGを、厳選して7本振り返りたいと思います。みなさんが初めてクリアしたRPGは何でしたか?
◆80年代後半を彩ったコマンド式RPGの名作たち
『ドラゴンクエスト』
1986年5月/エニックス(現スクウェア・エニックス)
1986年に発売された初代『DQ』は、まさに日本におけるRPG文化の礎となったタイトル。「週刊少年ジャンプ」でゲーム紹介コーナー「ファミコン神拳」のライターだった堀井雄二氏がゲームデザインを手掛けました。
初代『DQ』は全データ容量が64KBと、今で言えばWeb用の商品サムネイル画像ほどのデータ量で、カタカナが20文字しか使われていないのは有名な話。それにもかかわらず、ローラ姫のイベントや究極の選択など、プレイヤーを驚かせる仕掛けが満載でした。
その後、3人パーティになった『II』(1987年1月)、セーブ機能を搭載し、転職ができた『III』(1988年2月)と1年ごとに続編が発売。この「ロト三部作」によって、『DQ』シリーズは不動の地位を築きました。
◆初期ファミコンRPGの個性派タイトル
『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』
1987年6月/データイースト
『DQII』のヒット後、数多く登場し始めたコマンド式RPG。アーケードで独自の存在感を放っていたメーカー・データイーストが、ファミコンで初のRPGとしてリリースしたのが『ヘラクレスの栄光』。ギリシア神話の英雄ヘラクレスが、美の女神ヴィーナスをさらったハデスを倒す冒険に出ます。
ギリシア神話がモチーフとなったストーリーはわりと本格派。システムも片手武器と両手武器の使い分け、武器の耐久度の概念など工夫がありました。
といっても、個人的には回復アイテムとして、街に「とんかつ」や「はくさい」が売っていたのがインパクト大(笑)。鍛冶屋のヘパイトスがアイテム扱いで売り飛ばせる、というのもユニークでした。その後シリーズは続き、特に『III 神々の沈黙』(1992年/スーパーファミコン)と『IV 神々からの贈り物』(1994年/スーパーファミコン)は名作と評価されています(シナリオは、のちにスクウェアに移籍して『ファイナルファンタジーVII』を手掛ける野島一成氏が担当)。
◆「仲魔」を素材にする禁断の味……
『デジタル・デビル物語 女神転生』
1987年9月/ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)
『女神転生』は、西谷史氏の小説『デジタル・デビル・ストーリー』を原作としたOVAのメディアミックス企画として開発された3DダンジョンRPG。悪魔召喚プログラムを作った天才高校生の中島朱実(イザナギ神の転生)と不思議な力を持つ転校生・白鷺弓子(イザナミ神の転生)、ふたりが飛鳥の大魔宮で人間界の制圧を企む大魔王ルシファーに挑みます。
悪魔に話しかけて「仲魔」にし、ともに戦う伝統のシステムはここから。戦友のはずの仲魔を素材にして、より強い悪魔を召喚する「悪魔合体」は背徳的でした。
その後、開発元のアトラスが『真・女神転生』シリーズを展開。派生作の『ペルソナ』を含めて世界的に支持されるシリーズとなっていきます。『女神転生』は、リメイク版『旧約・女神転生』(1995年/スーパーファミコン)がリリースされていますが、再リメイクが待ち望まれています。
◆桃太郎電鉄の“前身”はRPGだった
『桃太郎伝説』
1987年10月/ハドソン(現コナミデジタルエンタテインメント)
中世ファンタジー風世界を舞台にしたRPGが増えるなか、和風かつ昔話のパロディで個性を発揮したのが『桃太郎伝説』。当時「週刊少年ジャンプ」の読者コーナー「ジャンプ放送局」のライター・さくまあきら氏がゲームデザインを手掛け、同コーナーのイラストレーター・土居孝幸氏がキャラクターデザインを担当。親近感もあり、売上100万本を達成しました。
ストーリーの基本ラインは勇気や愛を謳う温かい内容ですが、「ジャキ チェーン」や「きんぎんパールプレゼントのオニ」など、敵にはニヤリとできる鬼たちが多数。女湯をのぞける裏技もあって、おふざけ要素がいい味を出していました。
その後、ボードゲームの派生作『桃太郎電鉄』(1988年)が大ヒット。『桃太郎』シリーズというとすっかり「鉄道」になってしまったのがちょっと寂しいですね。
◆ドラクエのライバルRPGが登場
『ファイナルファンタジー』
1987年12月/スクウェア(現スクウェア・エニックス)
当時新興スタジオとしてシューティングRPG『キングスナイト』など実験的なタイトルをリリースしていたスクウェア。1987年発売のRPG『ファイナルファンタジー』は当初そこそこの売上だったものの、1990年の『III』で初のミリオンを記録し、『FF』シリーズは軌道に乗りました。
初代『FF』は、イラストレーターの天野喜孝氏が手掛けたアート感あるパッケージが印象的。また、植松伸夫氏によるアルペジオが美しいプレリュードも耳に残ります。敵と味方が左右に分かれる戦闘画面や、自由度の高いジョブシステムなど、初代からすでに本気度が伝わってきました。
『FFIII』以降、『FF』と『DQ』はコマンド式RPGの二大巨頭として君臨しますが、なんと2003年4月にスクウェアとエニックスが合併。このニュースはゲームファンにとって衝撃でした。
◆大胆なジャンル変更に賛否両論!?
『ゲゲゲの鬼太郎2 妖怪軍団の挑戦』
1987年12月/バンダイ(現バンダイナムコエンターテインメント)
流行りのジャンルに、マンガやアニメの人気キャラを乗せるというのは今も昔もゲーム業界の常套手段。横スクロールアクションでスマッシュヒットした前作『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境』(1986年)から、コマンド式RPGに大きくジャンルが変わったのが『ゲゲゲの鬼太郎2 妖怪軍団の挑戦』です。
日本全国を妖気雲で覆ってしまった九尾の狐を倒すため、鬼太郎が再び旅立ちます。砂かけばばあや子泣きじじいなど、おなじみの仲間たちは呼び出すと代わりに戦ってくれますが、パーティバトルではなくソロ戦闘。しかもザコ敵が非常に強く、RPGなのに序盤で放り投げたという声多数。グラフィックやBGMの雰囲気は良かったのですが……。
ナンバリングタイトルはこの『2』まで。スーパーファミコン以降も“鬼太郎ゲーム”はジャンルを転々としながら続いていきます。
◆新時代の到来を感じた名作RPG
『MOTHER』
1989年7月/任天堂
コピーライターの糸井重里氏がゲームデザインを手掛けた『MOTHER』は、『DQ』の影響下から離れ、新たな時代の到来を予感させたRPG。
舞台は現代のアメリカ。超能力を持った少年少女が家族を守るために大冒険を繰り広げます。アメリカ映画を想起させるノスタルジックな世界観と、糸井重里氏によるウィットに富んだセリフ回し、さらにムーンライダーズの鈴木慶一氏と『ポケットモンスター』で知られる作曲家・田中宏和氏のポップでサイケなBGMの融合は、ファミコンゲームの域を超えた作品性を感じさせました。
ナンバリングタイトルは続編の『MOTHER2 ギーグの逆襲』(1994年/スーパーファミコン)を経て、『MOTHER3』(2006年/GBA)で止まっています。現在は3作品ともNintendo Switch Online(『3』は「Nintendo Switch Online+追加パック」への加入が必要)で遊べます。
以上、80年代の名作RPG7本を駆け足で振り返ってきました。個人的には、地図や人形が同梱されていた『貝獣物語』(1988年)や、ホラーRPG『スウィートホーム』(1989年)も思い出深いです。
また、ファミコン以外では『ファンタシースター』(1987年/セガ・マークIII)、『魔界塔士Sa・Ga』(1989年/GB)も懐かしいですね。
<文/卯月 鮎>
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【卯月鮎】
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も