中東アラブ首長国連邦・ドバイで、世界最大級のIT展示会「GITEX」が2024年10月13~18日に開催された。最新の製品やテクノロジーを集めた「GITEX GLOBAL」と、数多くのスタートアップが参加した「EXPAND NORTH STAR」の同時開催だ。それぞれ別会場で、いずれも巨大な展示場に世界中から来た企業関係者や投資家らでにぎわった。
テーマも多様だ。AI(人工知能)にブロックチェーン、VR(仮想現実)、フィンテック、そして地球が抱える諸問題とテクノロジー……。1、2日では回り切れないスケールだ。J-CASTニュースでは3回に分けてリポートする。初回は、クライメート(気候)テックに焦点を当てる。
投資するなら長期間見守る必要がある
ディープテックという用語がある。食糧問題や地球温暖化をはじめとする社会問題の解決につながる科学的な発見や革新技術を意味し、社会にインパクトを与えられるものだ。例えばAIやバイオテクノロジーの先端技術を農業に生かして生産性を高める、などがある。
クライメートテックとは、気候変動に対処するためのテクノロジーだ。温室効果ガス排出の抑制・低減につながる技術で、例えば電気自動車、二酸化炭素の回収技術、家畜を要しない代替肉の製造などが挙げられる。
「EXPAND NORTH STAR」の会場には、クライメートテックのスタートアップに加え、投資家やアクセレレーター(事業開発・成長の支援者)が参加した。スタートアップの経営者にとっては、自社を成長軌道に乗せて事業を拡大するために、資金を呼び込む絶好の機会だ。
こうしたクライメートテック、ディープテック企業の資金調達の現状について、米投資会社SOSVを率いるショーン・オサリバン氏が、10月13日に会場の特設ステージで行われたトークセッションで言及した。1985年に立ち上げた会社「マップインフォ」の株式上場を成功させた起業家でもある。今日、世界で最もアクティブにクライメートテック企業への投資を続けている。
同氏が指摘したのは、クライメートテックのスタートアップへ投資するなら、長期間かけて成長を見守らなければならない点だ。そのため、大型のファンドによる投資が必要になるという。
一方でベンチャーキャピタル(VC)によるディープテックのスタートアップへの投資は、2024年をみると案件が限られており「2024年は資金調達が厳しい年」と話した。
(広告の後にも続きます)
10年未満でリターン求めないほうがよい
「長期」とはどのぐらいか。オサリバン氏は、10年未満で投資のリターンを求めないほうがよいと指摘。例えば20年ぐらいのスパンで考え、「長い目で見られればそれだけ、利益を出すうえではベター」だと考える。
実際、クライメートテック企業はスケールするまで長い時間がかかる。宮脇良二氏の著書『クライメートテック』(日本経済新聞出版)では、米電気自動車(EV)大手・テスラを例に挙げている。
同社は創業からIPO(新規株式公開)まで7年と「比較的短かった」。だが、主力のEV「『Model 3』が売れ始め、大きな成長が株式市場から期待されるまでに、16~17年の歳月がかかっている」と説明。クライメートテックのスタートアップへの「投資にはかなりの忍耐が求められるのである」と指摘している。
オサリバン氏の言葉を繰り返せば、2024年はVCからの投資が絞られており、状況は決して良いとは言えなさそうだ。だが「EXPAND NORTH STAR」を見て回った限り、世界各国からディープテック、クライメートテックのスタートアップが集まり、活気に満ちていた。次回、出展企業の具体例を紹介したい。