使わないときも、目が合うたびに「美しいなあ」と気持ちが明るくなります。
日常を彩る存在。
実家を出て、約2ヶ月が経ちました。掃除、洗濯、ごみ捨てといった家事の一つ一つが新鮮に楽しく思えた日々はすぐに終わり、洗濯物を回すタイミングに悩む毎日。
まだ家に必要なものが全然揃っていない(というより何が必要になるのかも分かっていない)状態で始まった今回の特集、自分にとっても生活の道具を揃える良い機会に。せっかくなので、取材をする中で手に入れたものから一部を紹介させてください。
イタリー皿(出西窯)
鮮やかな青色が美しいこの皿は、東京・世田谷の『工芸喜頓』に並んでいたもの。どんな料理に合うのだろうと眺めていると、店主の石原文子さんが「この前その皿でカレーを食べましたよ」と写真を見せてくださり、その美しさに惹かれて購入。実際に使ってみると、深さがあって盛り付けやすいのも嬉しい。
箸 ストライプ(starnet)
栃木・益子の『starnet』がオリジナルで販売しているもので、水玉模様など他にも種類があります。硬い鉄木から職人が一本ずつ削り出した箸は先が細く、すべりにくい。先日、この箸を使ってひねり揚げを食べていたら、つかむのが楽しくて気づいたら一袋完食していました。
珈琲ミル箒(綯屋)
ちょうどコーヒーミルを掃除する道具を探していたときに、神奈川・北鎌倉の『morozumi』で「これだ!」と見つけました。つい手に取りたくなる愛らしいサイズ感。コーヒーミルに限らず、パソコンのキーボードなど、細かい隙間で活躍するアイテムです。
元々、民芸に全くといっていいほど関心のなかった僕ですが、店主の方々にお話を伺う内に、ものに対する見方が変わっていくのを実感しました。作り手の想いや工夫を聞いた上で選び取ったものは、使うたびに増す愛おしさ。お気に入りの食器は丁寧に洗おうと思えるし、手馴染みの良い小箒のおかげで、掃除が楽しくなりました。
日常を彩る民芸品が数多く登場する今号、心ときめく出合いがきっとあるはず。ぜひ手に取って読んでみてもらえたら嬉しいです。
(本誌編集部/出口晴臣)
&Premium No. 132 Folk Crafts & Art / 暮らしを楽しむ、手仕事と民芸。
地域に根ざした人々の生活のなかで生まれた民芸や、作り手の思いが込められた手仕事の日用品。歴史と伝統のなかで育まれた技術によって作りだされる、美しい暮らしの道具。その魅力をていねいに感じ取り、いまのライフスタイルに上手に取り入れていくことは、これからのBetter Lifeをより心地よく、温かなものにしてくれるのではないでしょうか。来年は柳宗悦らが提唱した「民藝」という言葉が生まれてから100年を迎える節目の年。私たちを取り巻く社会もテクノロジーも大きく変化していくなか、あらためてその心と楽しみについても見つめ直してみたいと思います。
もっと読む