オーストラリア戦争記念館を訪れた国王夫妻(21日、豪キャンベラ)|Mark Baker / AP Photo
イギリスのチャールズ国王夫妻が18日からオーストラリアを訪問している。歓迎レセプションが開催されるが、オーストラリアの6州の州首相全員が、参加を辞退したと報じられた。君主制を支持する人々からは、王に対する侮辱だと批判が出ているが、今回の訪問は、イギリス国王を国家元首とする立憲君主制廃止を求める活動にも影響を与えそうだ。
◆即位後初の訪問 物議を呼ぶ歓迎レセプション
チャールズ国王にとって、今回のオーストラリア訪問は、王位に就いて以来初のものとなる。また、イギリス君主による訪問も2011年以来となり、21日に首都キャンベラで歓迎レセプションが開かれることになっている。
しかし豪メディアによれば、レセプションにはアルバニージー豪首相は参加するものの、6州すべての州首相は、選挙運動や閣議といった「ほかの仕事」を理由に、招待を辞退したという。豪最大の州であるニューサウスウェールズ州の州首相は、訪問中の別の機会にチャールズ国王に会うつもりだと話した。(米政治専門サイト『ポリティコ』)
◆女王の死で議論再燃? 共和制移行を求める声
イギリスのかつての植民地であったオーストラリアは、1901年に連邦化し独立国となったが、現在でもイギリス国王を元首とする立憲君主制を維持している。豪君主主義者同盟のベブ・マッカーサー報道官は、州首相たちの冷めた反応は国王への「平手打ち」であり、とんでもない侮辱だと述べた(ポリティコ)。
もっとも、オーストラリアでは共和制を求める声もあり、故エリザベス2世が在位していた1999年には国民投票が実施されている。このときは、君主制の維持が支持された。しかし、非常に人気の高かった女王の死後に、共和制移行を求める声が強まるのではないかという見方もあった。
チャールズ王訪豪を前に、共和制を支持する団体の豪共和国運動のアイザック・ジェフリー氏は、オーストラリアはフルタイムで働ける地元の人物を国家元首にするべきだとイギリス王室に意見を述べた。これに対しチャールズ国王は、「共和制への移行は、オーストラリア国民が決める問題だ」という返答を、王室職員を通じて送ったという。(デイリー・メール紙)
◆民意はどっちつかず 将来的には現制度維持困難か?
実際のところ、オーストラリア国民の意見は分かれている。チャールズ国王即位1年後の調査会社ユーガブの調査では、できるだけ早く共和制への移行を望む人は32%、長期的に立憲君主制を維持したい人は35%と拮抗。また、チャールズ国王の死後に共和制に移行すべきとした人が12%だった。
君主制の良し悪しを問う質問への最も多い回答は「良くも悪くもない(38%)」で、「王制を誇りに思うか」という質問に対しては、「誇りにも恥ずかしくも思っていない(42%)」が最も多かった。
これらの回答を見る限り、イギリス君主を国家元首とする現在の体制を早急に変える必要性を、オーストラリア国民は感じていないようだ。もっとも、将来的には君主制はなくなると考える人が多く、51%が100年後も君主制が続いていることはないと回答している。特に若い世代では君主制への支持が低く、長期的に見て現体制の存続は難しそうだ。