「自分で治す&防ぐ!下肢静脈瘤」は、下肢静脈瘤の症状の予防法・治療法を、血管外科医・岩井武尚さん(慶友会つくば血管センター長)に教わる連載企画。今回は、下肢静脈瘤を予防できる体操を5つまとめて紹介します。
むくみやだるさが解消!下肢静脈瘤におすすめの体操
下肢静脈瘤の症状は、長時間立ち続ける、あるいは座り続ける生活をしている人に起こりやすいことがわかっています。
「立っているときや座っているとき、脚は重力の影響を受けて血液が心臓に戻りにくい状態が続きます。そのため脚の静脈に血がたまりやすくなるのです」と岩井さん。
そこで効果的なのが、「寝ながら」行う体操(体操1、2参照)です。重力の影響を受けずに、脚を前後や左右、上下に動かして、静脈血の流れを促しましょう。さらに、寝ながら腹式呼吸することも有効です(体操3参照)。
「大きく息を吸って吐いて、横隔膜を上げ下げすることがポンプの働きとなり、静脈血が心臓に戻るのを助けます。スマホを見たり、パソコンをしたり、現代人は何かと前かがみになって息が浅くなりがちです。日頃から深い呼吸を心がけましょう」(岩井さん)
もう一つ、重力に逆らって心臓に血液を戻すために、重要な役割を果たしているのが、脚の「筋肉」です。
「ふくらはぎにある腓腹筋やヒラメ筋が動くと、ポンプのような働きをして血液を上へ押し上げます。これを『筋ポンプ』と呼びます」と岩井さん。かかとを上げるストレッチ(体操4参照)の他、日常的に階段を使ったり、ときどき屈伸したりすることで筋ポンプを活性化できます。
また下肢静脈瘤が起こる表在静脈は、皮膚のすぐ下を流れているので、手のひらで優しくマッサージするのも効果的です(体操5参照)。
岩井さんは、「どれか一つでも毎日続けることが大切。脚のむくみやだるさも解消しますよ」とアドバイスします。
監修者プロフィール:血管外科医・岩井武尚さん(慶友会つくば血管センター長)
いわい・たけひさ 1942(昭和17)年生まれ。東京医科歯科大学卒業後、73年から米国留学。帰国後、東京医科歯科大学外科教授、血管外科診療科長、同大大学院教授を経て退職。2007年から現職・慶友会つくば血管センター長に。
著書に『下肢静脈瘤・むくみは自分で治せる』(学研プラス・刊)、『自分で治す! 下肢静脈瘤』(洋泉社・刊)など。
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下肢静脈瘤予防体操1:あおむけ姿勢で足首ぶらぶら体操
重力の影響が少なく、血液が心臓へ戻りやすいあおむけ姿勢。この状態で足首を動かすことで、さらに静脈血の戻りを促しましょう。
1. あおむけになる
あおむけになりリラックスする。脚は肩幅程度に広げて伸ばし、両手は自然に体の横に置く。
2. 足首を前後に動かす
左右のつま先をできるだけ大きいふり幅で前後にゆっくり10回動かす。両足一緒でも、片足ずつでもOK。ふくらはぎの筋肉が動くのを意識する。座って行っても効果あり。
3. 足首を左右に動かす
左右のかかとを床につけたまま、つま先を左右にゆっくり10回動かす。股関節を使って足全体を動かすようなイメージで。