相談者の幸子さんは、父の遺産分割をきっかけに弟に不満を抱くように。以来15年間膠着状態が続いたものの、母の死によってついに遺産分割に蹴りをつけることになりました。しかし弟との溝は深く……代理人として間に入った相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)はどのように解決に導いたのでしょうか。
15年間にわたる確執のきっかけ
幸子さん(62歳・女性)の父親は2009年に亡くなり、相続の手続きが必要になりました。相続人は母親と58歳の弟の3人です。
父親の財産は35坪の自宅の不動産程度で、しかも、自宅の土地、建物は共働きだった母親と2分の1ずつの共有名義となっていました。
現在の自宅の土地、建物の2分の1の相続評価は3,000万円ですので、預金を足しても、当時の相続税の基礎控除8,000万円以内の財産で、相続税の申告は不要でした。
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父親の遺産分割が弟との行き違いの発端
父親は2009年に亡くなりましたが、15年経っても遺産分割協議ができていません。ことの発端は四十九日の法要の席だったといいます。法要が終わり、母親と幸子さん夫婦、弟夫婦は実家に戻ったのですが、その席で弟からこんなふうに言われたのです。
「実家は自分が相続する。お母さんと姉さんは現金でいいな?」「書類も作ってあって、お母さんの印はもらったから、姉さんもここに実印押してくれたらいいよ」と。
母親からも何も聞いていなかった幸子さんは弟が、さも当然のように、「実家を相続する」ということが許せなかったのです。
弟は会社員で、結婚するまでは実家で同居していましたが、結婚してからは実家を離れています。さらに子どもが生まれてからは自分の家も購入していますので、実家を相続するのは納得できないと、幸子さんは印を押さなかったのです。
それ以来、弟は幸子さん夫婦と話をしようとせず、ずっと避けている状況。母親は男の弟がかわいいようで、「弟が言うとおりに家は弟名義にすればいいのでは」と言っています。結果、父親の名義のままであっという間に15年が過ぎたのでした。