【タイプ別】下肢静脈瘤の治療法と特徴
下肢静脈瘤が進行すると、脚のむくみや重だるさなどに加え、くるぶし付近の内側から肌が黒くなる「色素沈着」や、「湿疹」によるかゆみなどの合併症を起こすことがあります。
そうした場合は、「早めの治療をすることが望ましい」と慶友会つくば血管センター長の岩井武尚(いわい・たけひさ)さん。見た目が気になることも、治療を受ける十分な理由になるといいます。
病院では、問診とエコー検査が行われます。「検査は痛みがなく、逆流がどこで起きているかなどを調べることができます」と岩井さん。検査後は、医師と相談して治療法を選択します。具体的には以下のような方法があります。
下肢静脈瘤の治療法1:圧迫療法
弾性ストッキング等で脚を圧迫して、症状を抑えます。
治療に適した下肢静脈瘤のタイプ:軽症例の進行予防、手術後の再発予防。
特徴:日常的にケアできるが、根治療法ではない。
入院:なし
保険適用:△
治療費の目安:3000~5000円
下肢静脈瘤の治療法2:硬化療法
静脈痛のある静脈に薬剤を注射し、血管を固めます。固まった血管は半年ほどで自然になくなります(他の静脈があるので問題ありません)。
治療に適した下肢静脈瘤のタイプ:クモの巣状静脈瘤、網目状静脈瘤、 分枝静脈瘤
特徴:体への負担が少なく、治療後歩いて帰宅できる。ただし、治療後、数週間の圧迫が必要。
入院:なし
保険適用:〇
治療費の目安:約5000円
下肢静脈瘤の治療法3:血管内治療
カテーテルを挿入し、レーザーや高周波で静脈瘤のある静脈を焼いて塞ぎます。
治療に適した下肢静脈瘤のタイプ:伏在静脈瘤
特徴:体への負担が少なく、治療後歩いて帰宅することも可能。痛みや合併症も少ない。
入院:日帰り~1泊入院
保険適用:〇
治療費の目安:約5万円
下肢静脈瘤の治療法4:ストリッピング手術
細いワイヤーを入れ、ダメになった静脈を抜き取ります。
治療に適した下肢静脈瘤のタイプ:伏在静脈瘤
特徴:血管内治療が難しい、進行した静脈瘤も治療できるが、術後、痛みや後遺症を伴う場合もある。
入院:あり
保険適用:〇
治療費の目安:約4万円
次のホームページも参考に、専門の医療機関を受診することをおすすめします。
下肢静脈瘤の診断をしてほしい場合は、一般社団法人日本脈管学会 脈管専門医のホームページへ。レーザー治療を検討している場合は、下 肢静脈瘤血管内焼灼術実施.管理委員会 実施医,指導医.実施施設一覧を参照ください。
監修者プロフィール:血管外科医・岩井武尚さん(慶友会つくば血管センター長)
いわい・たけひさ 1942(昭和17)年生まれ。東京医科歯科大学卒業後、73年から米国留学。帰国後、東京医科歯科大学外科教授、血管外科診療科長、同大大学院教授を経て退職。2007年から現職・慶友会つくば血管センター長に。
著書に『下肢静脈瘤・むくみは自分で治せる』(学研プラス・刊)、『自分で治す! 下肢静脈瘤』(洋泉社・刊)など。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、イラストレーション=もりあやこ
※この記事は、「ハルメク」2018年3月号健康特集「自分で防ぐ&治す『下肢静脈瘤』」を再編集しています。