「水曜日が一番、何を作ったらいいか分からない、何も考えたくない日。だから元気が出るカレーの日にした」と言うのは、料理家で管理栄養士の長谷川あかりさん。8月に著書『水曜日はおうちカレー~クタクタな日こそ、カレーを食べよう。』が出たばかり。紹介されているカレーは、“お味噌汁”のような存在!? さらに長谷川さんは言う、「家庭料理はおいしくなくていい」――。
美味しさを超えて、心を満たす一皿に
家庭料理における大切なポイントとして、「おいしくなくてもいい」と言う長谷川さん。味がすべてではなく、自分が作った料理がそこにあるだけでいい、と思えるようになってきたのだとか。
「家庭料理で追い詰められる方って、おいしさが一番の目的になっているからだと思うんです。例えば、華やかだけどデザイン性の強い洋服を毎日着続けられないように、家庭料理でインパクトのある味は毎日いらないんです。味付けに依存せず、シンプルでいい。私のレシピも細かい指示ではなく骨組みだけを提供しているので、それを基にご家庭で自分らしい料理を作ってほしいですね」
ちなみに新たなレシピを作るとき、長谷川さんは、メニュー名を考えるところからスタートするそうだ。気持ちが上がる名前を先に決め、その後で自分の技術やスタイルに合ったレシピを作り上げていく。料理を創作する課程もまねしてみると、新しい楽しさに出合えるかもしれない。
さて、本書から、長谷川さんのおすすめレシピを教えてもらった。まずは、忙しい女性が気軽に作れるものとして「生姜ダレの混ぜサラダカレー」。タレを作っておけば、あとは野菜を盛り合わせるだけの簡単で美味しい一皿になる。ほかに「白菜としらすのカレー ローズマリー風味」「牡蠣(かき)と春菊のカレー バター風味」も試してみてもらいたい。
家庭料理では美味しさの追求がメインではないと語る長谷川さんの理想は、「料理が生活の中で自然に心と体を満たす存在になること」だと言う。
「食べた瞬間に『超うまい!』ではなく、二口、三口食べ終わった時に『作って良かった』と感じてもらい、また作りたいと思えるようなレシピを作るのが目標です。持続的な『作りたい気持ち』を育てることが大切だと考えているので。これからも生活に根ざしたものを提供していきたいです」
interview & text: Tomoko Komiyama photo: Tomoko Hagimoto