独立経験者が転職前にやるべきこと

冒頭で述べたように、現在は独立自体が非常に簡単になりました。法人設立のハードルが低くなったため、その評価の重要度は以前ほどではなくなっています。例えば、昔は株式会社を設立するのに資本金1,000万円が必要でしたが、その時代には資本金が一定の担保になっていました。つまり、ある程度の信用がなければ法人を設立することはできなかったのです。

その時代の会社と現在の0円企業は、同列には語れません。いまや有限会社も新設できなくなっていることはご承知のとおりです。法人を設立したことだけで高く評価される時代は過ぎ去りました。

ただし、法人格は上手に使えば個人のプライベートカンパニーとして様々な面で役立ちます。例えば、節税効果や商法の知識があれば得をすることもあります。その一方で、事情を知っている人から見ると、そうした点が疑われる要素になる可能性もあるでしょう。

ですから、独立経験の経験の後に何か思うところがあって転職を考える方は、まず独立したときの棚卸しが必要です。どのように仮説を立て、どのような目的で、どのようにトライし、どのような結果を経て、どのように現在のような結末を迎えたのか。法人がたどった経歴を客観的に説明できる準備を一般の候補者よりも重視しておくべきです。

独立経験があったなら、その始まりと終わり、そこに至る背景など「起承転結」を明確に説明できるようにしておきましょう。それができない場合は、実際に持っている経験や実績より低い評価を受けやすいので注意する必要があります。独立経験が再就職のマイナスになることはまずありませんが、あらゆる可能性を想定して、不利な評価を受けないよう心掛けておきましょう。

福留 拓人

東京エグゼクティブ・サーチ株式会社

代表取締役社長