コロナ禍の巣ごもり需要を背景に起きたアウトドアブーム。その人気に陰りが見え始めているとも言われているが、今夏も大勢の人でキャンプ場は賑わった。
秋のシーズンもキャンプ人気が高く、これからキャンプの予定がある人も多いだろう。しかし、客が増えるとなると出てくるのが迷惑客の存在だ。今回はキャンプ場の関係者に話を聞いてみた。
◆生ゴミを炊事場に捨てる客
キャンプ場の聖地ともいわれる山梨県道志村でキャンプ場を営むAさんは、炊事場の使い方についてご立腹だ。
「炊事場をゴミ捨て場と思ってる人が多いんですよ。わざわざ炊事場の横にゴミ箱を置いて『生ゴミはこちらへ』ってやってるのに、全部流しに捨てていきやがるの。排水口が詰まって、流しがに水が溜まって溢れたことも一度や二度じゃない。溢れてんのにそこで洗い物してる人がいて、頭おかしいのかって思ったよ」
◆迷惑客がつける“星1つの口コミ”
炊事場の使い方にご立腹なのは、なにも山のキャンプ場だけではない。海沿いでキャンプ場を営むBさんも呆れ顔だ。
「近くで海水浴ができるのですが、海水浴に行くとみんな砂まみれになるんです。砂は配水管に溜まって詰まるから、専用の水場で洗うように強く伝えているんですが、それでも料理を作る炊事場で洗う人がいて……。あるとき、砂まみれのウォーターシューズを炊事場で洗っている親子がいたので注意しました。そうしたら、おそらくその人だと思うんですが、Googleのクチコミに『経営者が炊事場の使い方に口うるさい』って星1つ付けられまして……。ルール違反なことをしているから注意しているのに、それで口コミに傷をつけられたらたまんないですよ」
自分もそこで料理を作ったり、食材を洗うのに、シューズを洗ったりゴミだらけにする神経はいかがなものか。ゴミは誰かが片付けてくれるという前提でしているのであれば、なんと傲慢な考えなのだろうか。
◆ゴミの持ち帰りをお願いすると…
そのゴミに関する怒りの声もよく聞かれた。前述のAさんと同じく山梨県道志村でキャンプ場を営むCさんに話を聞いた。
「ウチのキャンプ場は『ゴミは持ち帰り』がルールなんですが、それでも捨てていく人が後を絶たない。ホームページにも書いているのに、受付で伝えると『そんなの聞いてないし、ゴミを荷物と一緒に乗せるのはイヤだ』って言われることもあります。泊まっていたサイトにゴミ袋をまとめて置いて帰られることは珍しくないです。置いて帰ろうとしているのを見つけて、持って帰るように言ったら『カネ払えばいいんだろ!』って逆ギレされたこともありますね。
キレられるのもイヤですが、キャンプ場に隣接している私の自宅に捨てていく人もいるんです。これは本当に腹が立つ。受付棟の裏に自宅があるんですが、その庭先に置いていくんです。自分の家にゴミが捨てられたらどんな気持ちになるのか……。考えたことないんでしょうね」
たしかにゴミを持ち帰ることに抵抗を感じるのは理解ができるが、人の家の庭先にゴミを捨てていくとは言語道断だろう。
◆高級な新品キャンプグッズを持ってきた金持ち客
北関東でキャンプ場を営むDさんも、迷惑客に悩む一人だ。
「ウチはゴミ回収をしているんですが、穴が空いた、ポールが折れたからってテントやタープを捨てていく人がたまにいるんです。いくら“燃えるもの”でも、あんな大きいものは粗大ゴミになります。そのなかでもイチバン驚いたのは、キャンプ道具一式捨てていった客。その人はかなりお金持ちっぽくて、高級なRV車で乗り付け、スノーピークやヘリノックスなど、新品で高級なテントやギアがズラリ。一緒に来ていた人は慣れた感じで、その人にいろいろ教えながらセッティングしていました。しかし1泊して翌日、その日は朝から大雨で雨の中で撤収作業をすることになってしまったのです」
◆片付けが面倒になった客が“まさかの行動”に
雨の中、ギアを収納したり、タープやテントを畳んだりするのは骨が折れる作業だ。慣れた人でも雨中の撤収作業はツラいのだが、初心者にとってはなおのこと。一緒に来ていた人も自分の片付けで精一杯で、なかなか撤収作業が捗らずにいると、驚きの行動に出たという。
「なんと……、キャンプ道具を片付けず、そのまま帰っちゃったんです。キャンプグッズがそのままの状態で帰宅したので、あとから電話したら『全部処分してくれ』って、そんなんできるわけないじゃないですか。それはできないから取りに来てくださいって言ったら、『カネ払えばいいのか? いくらだ?』って逆ギレ。それからは何度電話しても出てもらえず、仕方ないから回収してレンタル品として使ってます」
キャンプの楽しさには“不便を楽しむ”こともあるだろう。カネを払えばなんとかなると思うその心では、キャンプは楽しめなかったのではないだろうか。
文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター