亡くなった有名人の故人所得は桁違いの金額です。故人所得とは、亡くなった後に発生する所得のことです。2016年に亡くなったアメリカのロック歌手プリンスの遺産相続について、多くの人々が隠し子など相続人として名乗りを上げる事態となりましたが、最終的に裁判所が兄弟6人を相続人として認定しました。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。
国際的スターたちの故人所得
1977年に亡くなったエルビス・プレスリーの年間故人所得は日本円に換算すると数十億円になったと報じられています。同様に1980年に死亡した元ビートルズのジョン・レノンも上記の経済雑誌の2011年の記事によれば、日本円で約9億円の年間故人所得があったとされています。歌手のマイケル・ジャクソンが2009年に亡くなったとき、CD等が爆発的に売れたことを記憶されている人もいるかと思います。
このように歌手の場合は、生前に作成したCD等が長くファンに愛されて売れ続けるという現象が想像できますが、歌手以外でも往年のハリウッド・スターのエリザベス・テイラーやマリリン・モンローなども肖像権から生じる多額の故人所得が存在します。
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プリンスの遺産相続
ここでアメリカのロック歌手で、2016年に亡くなったプリンスの遺産相続について見ていきます。2022年8月4日の報道では、プリンスの遺産総額が200億円超あり、そのうちの7.5億円が遺族間で分配されたとしています。
プリンスの本名はPrince Rogers Nelson(1958年6月-2016年4月:享年57歳)で、死因は薬物過剰摂取です。職業はミュージシャン、作曲家、音楽プロデューサー等多方面に活躍しました。遺産の大部分は音楽関連の著作権です。アルバム・シングルの総数は1億5,000万枚以上とのことです。
音楽、芸術関係で印税収入がある者は、死亡後も多額の収入があります。雑誌『フォーブス』が発表したある年の故人所得では、プリンスが1億2,000万ドル、マイケル・ジャクソンが7,500万ドル、エルビス・プレスリーは3,000万ドル、ジョン・レノンは1,200万ドルでした。
上述したように、プリンスは相続開始後も多額の所得がありました。相続開始後からプロベイト(アメリカの裁判所の管理下で、相続財産の調査・評価を行い、税金その他の負債を支払い、残った財産を相続人に分配する手続き)の処理が済むまでの期間に生じた所得の処理の問題です。
被相続人に相続後に所得があった場合、基本的にはこの所得は遺産財団(エステート)に帰属します。遺産財団は日本では未分割財産と同じ性格を持ちますが、米国では遺産財団が納税者となり、その手続きは管財人が代行します。