非居住制限納税義務者がいる場合の相続税

以下のような設例を考えてみました。

①被相続人(外国に10年以上居住)、②相続人(子のA、日本居住)、相続人(子のB、外国籍で日本に住所なし)、③相続財産(国内財産1億円、国外財産1億円)④相続財産の分配:AとBで均等に相続

被相続人は、外国に10年以上居住なので、国内に住所なし、かつ10年以内に日本に住所なしということで、非居住被相続人ということになります。

相続人のAは、日本に住所ありということで居住無制限納税義務者となり、国内財産および国外財産を共に課税となります。

相続人Bは、国内に住所なしで、かつ、日本国籍なしということで非居住制限納税義務者となり、国内財産のみが課税となります。

AとBは、それぞれ国内財産の5,000万円と国外財産の5,000万円を相続します。

Aは居住無制限納税義務者ですので、国内財産の5,000万円と国外財産の5,000万円が課税対象になります。Bは非居住制限納税義務者ですので、国内財産5,000万円のみが課税対象になります。

結果として、課税財産はAの相続分1億円とBの相続分5,000万円の合計の1億5,000万円です。ここから基礎控除額3,000万円+600万円×2=4,200万円を控除します。

次に、法定相続人の取得金額を計算します(1億800万円÷2=5,400万円)。ここで算出税額を計算して、算出税額を合計して相続税額が計算されます。

結論としましては、海外移住という手法による租税回避は、相当に難しい状況になるといえるでしょう。

矢内一好

国際課税研究所首席研究員