50代以上の約6割の人が発症するという下肢静脈瘤のセルフケア方法や予防法を医師の広川雅之さんに伺う企画。最終回は、治療方法についてです。保険適応でできる2種類の治療について、費用も含めて詳しく教えてもらいます。
教えてくれたのは、広川雅之(ひろかわ・まさゆき)さん
お茶の水血管外科クリニック院長。1987年、高知医科大学卒業。ジョンズホプキンス大学留学、東京医科歯科大学血管外科助手などを経て、2005年から現職。東京医科歯科大学血管外科講師、日本静脈学会理事も務める。著書に『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』(KADOKAWA刊)など。
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血管内治療で改善!保険適用なので費用も安心
むくみなどの症状がつらい、進行して皮膚炎を起こしている、セルフケアで改善しない、見た目が気になる……そんな場合の下肢静脈瘤は、治療を検討します。
「下肢静脈瘤の治療はこの10年ほどで大きく進歩しました。『血管内治療』『硬化療法』『手術』に大別されますが、主流は血管内治療。細い管を静脈に入れるだけなので体への負担が小さく、局所麻酔をするので痛みもありません。日帰り治療ができます」とお茶の水血管外科クリニック院長の広川雅之(ひろかわ・まさゆき)さん。
血管内治療は、伏在型静脈瘤が対象。現在最も多いのはレーザーや高周波電流でコブのある静脈を焼いて固める「血管内焼灼(しょうしゃく)術」ですが、2019年には「グルー治療」という新しい方法も健康保険で受けられるようになりました。
グルー治療は、医療用の接着剤で静脈を塞ぐ方法。血管を焼かないので局所麻酔が1か所で済み、周辺組織へのダメージも抑えられます。治療後、合併症予防のための弾性ストッキングをはく必要がないのも利点です。
ただし接着剤のアレルギーや膠原病などの持病がある人は対象外です。「これまで以上に負担が軽いので、今後は受ける患者さんが増えるでしょう」と広川さん。
なお、側枝型や網目状など軽症タイプの静脈瘤に対しては、薬剤を注射してコブのある静脈を塞ぐ「硬化療法」が用いられています。