「こんなにしてあげたのに、なんで?」職場や日常生活において、感謝が足りない相手に、イライラしてしまった経験はないでしょうか。研修講師として25万人以上にアンガーマネジメントを指導してきた戸田久実氏は、特に仕事の場面においては、ときには感謝をしてもらうように上手く伝えることが重要だが、その「伝えるか」「伝えないか」の判断基準を明確にすることが、ストレスを軽減し、ビジネスを円滑に進める鍵であると話します。本連載では、戸田氏の著書『アンガーマネジメント大全』(日経ビジネス人文庫)から、感謝が足りない相手にイライラしてしまったときの適切な対応策を、一部抜粋・編集して紹介します。

無意識に、相手に求めすぎていないか

Q:感謝が足りない相手にイライラしてしまいます

A:怒りを「お願い」に変えて伝えよう

相手に「こうしてほしい」と期待しすぎていませんか? 何も言わずにムカムカするのではなく「◯◯してほしい」と、お願いする形で伝えましょう。



 

相手に何かをしてあげたときに感謝やお礼の言葉がないと、「感謝をするべきだろう」と思ってしまうことは、誰にでもあるでしょう。感謝されたとしても、自分が思っていたことと違ったとき、「自分ならばもっとこんなふうに感謝するのに」と、虚しさやがっかり感を味わい、怒りがわいてしまう場合もあります。

どこまで感謝を表すのかという基準も、表し方も、人それぞれ違うもの。ひと口に「感謝を表す」といっても、その人によって、求めているものは大きく異なるのです。

わたしも若い頃は、「こんなにしてあげたのに、なんで?」と思ってしまったこともありました。でも、大人になってから、それは利己的な考えだったということに気づいたのです。相手に感謝の言葉をもらおうと期待しすぎないことも、ときには必要です。

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不満は本人に「お願い」として伝える

なかには「してもらえることが当たり前」と思っている人もいるかもしれません。そういう人に対しては、思いきって「せめてありがとうは言ってほしい」と正直に伝えてもいいでしょう。

よくないのは、「この人はいつも感謝が足りない人だ」と相手に対して嫌な態度をとったり、言葉で伝えずに不機嫌な態度をとることです。これでは、あなたがなぜ怒っているのかが相手に伝わりませんし、「あの人は急に機嫌が悪くなって、感じが悪い」と、逆に自分の評価を下げることにつながってしまいます……。

さらによくないのは、「あの人、わたしがここまでしてあげたのに、なんの感謝もない」と、ほかの人に悪口のように言うことです。これを繰り返していると「この人はこういうことで怒って、悪口を言ってしまう人なんだ」という印象を、周囲に与えてしまいかねません。また、その悪口がまわりまわって、本人の耳に入ってしまう可能性もあります。

感謝の仕方について怒りや不満がわいたとき、本当に気になったなら「『ありがとう』 『助かった』と言ってくれると、次も気持ちよく協力してあげられるんだ」とお願いする形にして、本人に直接伝えましょう。