働き方改革の施行や労働人口の減少を背景に、日本企業はこの数十年のあいだに大きな変化を迎えました。変化の一つに「理想のリーダー像」があります。本記事では、小山透氏の著書『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版)より一部抜粋・再編集し、日本企業における新たなリーダー像について解説します。

「サーバントリーダーシップ」が求められる理由

チームが最高のパフォーマンスを上げるためには、どうすればよいのでしょうか。

近年、従来の支配型リーダーシップに対して、サーバントリーダーシップが注目されています。サーバントリーダーシップは、メンバーに対してできる限りの奉仕を行い、それを通じてメンバーの仕事に対するモチベーションを高め、自主的に仕事をさせるように導いていくリーダーシップ論です。「サーバント」には「使用人」「召使い」という意味があります。

リーダーが先頭に立ってメンバーをぐいぐい引っ張っていく、従来の支配型リーダーシップとは異なった考え方です。命令して仕事を進めるのではなく、どうすればメンバーのもつ能力を最大限に発揮できるのかを考え、それが実現できる環境づくりやメンバーへの支援を通じて仕事を進める方法です。

働き方改革の施行や、労働人口の減少から、現代は従業員個人の多様な価値観が重視されています。事実、個人の多様な能力や経験などの「目には見えない価値」をもつ人材を受け入れ、経営力を上げる「ダイバーシティ経営」を採用する企業が増えています。

多様な人材の価値を最大限に生かすには、メンバー同士の密なコミュニケーションと信頼関係構築が欠かせません。マネジャー「個人」の能力ではなく、メンバーの「能力や意志=多様な価値観」を重視するサーバントリーダーシップに注目が集まるようになりました。チームとしての成果が求められる現代において、理想のリーダー像も変化しています。

また、デジタル技術の進歩もあります。従来はマネジメント層による的確で合理性のある指示・命令に従えば成果が出ていたため、多くの場合マネジメント層の経験や体験に基づくリーダーシップが重視されていました。しかしデジタル技術の進歩とともに、現代は多くの人が行なってきた仕事が機械やAI(人工知能)に代替される時代となっています。

その結果、メンバーには創造的で革新的なアイデアによるイノベーションが求められるようになりました。顧客ニーズの多様化や激しい時代の変化から、これまでマネジメント層が培ってきた経験や体験による指示・命令では解決できない問題も生まれるでしょう。

サーバントリーダーシップは、チームの意見や知識、能力をマネジメント層が引き出すため、ひとりでは解決が困難な課題や革新的なイノベーションの創出につながります。

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サーバントリーダーシップのデメリット

サーバントリーダーシップにはデメリットもあります。物事を決定するまでに時間がかかる点です。支配型のリーダーは自分の意思ひとつで物事を決定できますが、サーバントリーダーの場合はチーム全員の意見を聞き、それをまとめたうえで話し合って決定しなければなりません。

チームを構成する人数が多ければ多いほど、この作業にかかる時間は膨大になり、早急に対応を求められるシーンでは1歩遅れた対応をとることになってしまいます。ホームページを複数人で作製する場合に、トップページのデザインなどはある程度リーダーの権限において決定してもよいと思われますが、みんなの意見を聞いてまとめようとすると時間がかかってしまいます。場合によっては業務に支障をきたす可能性もあるので注意が必要です。
 

小山 透
プロジェクトマネジメント・エバンジェリスト

※本記事は『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。