1.労働基準監督署に相談(通報)できることは?

労働条件、労災、安全衛生の相談ができる

労働基準監督署(労基署)には、労働条件、労災保険、職場の安全や衛生に関わる相談や通報をすることができます。労基署の対応範囲は、労働基準法をはじめとした「労働基準関係法令」に関わる問題です。

労働基準関係法令に含まれる法律

労働基準法最低賃金法労働安全衛生法じん肺法家内労働法賃金の支払の確保等に関する法律

など

労基署に相談できる労働問題5パターン

具体的には、下記のような労働問題を相談することができます。

1.賃金・残業代の未払い

賃金や残業代が適切に支払われていない場合、労働基準法違反となり労基署に相談できます。

賃金は通貨で直接(または同意を得て口座振込)毎月一回以上、支払うべき給与の全額を支払わなければならないと定められています。そのため賃金に代えて現物支給をもって給料としたり、深夜や休日の割増賃金を払わなかったりすることは禁止されています。

2.サブロク協定(36協定)未締結での時間外労働

残業(時間外労働)があることは当たり前のことに思えるかもしれませんが、いわゆる「36(サブロク)協定」を締結しないで一日8時間・週40時間を超えて労働させることは労働基準法違反となります。事業者は所轄労働基準監督署長へ届け出ることになっており、残業をさせる業務の種類や、一日あたりの上限時間なども決める必要があります。

なお、36協定を結んでいても下記の時間を超えて労働させることはできません。超過していると労働基準法違反となり、労基署の指導や勧告の対象となります。

月45時間・年360時間(または月45時間以上の残業が年6ヶ月以上)月100時間、複数月平均80時間、年720時間(臨時かつ特別な事情があり労使間の合意がある場合)

36協定を含む労使協定は全従業員への書面での交付や、全員がアクセス可能な社内ネットワークなどでの周知が義務付けられています。残業時間で悩んだときは、36協定が締結されているか確認してみるのもよいでしょう。

3.休憩や有給休暇を取らせてもらえない

休憩や休暇の取得が制限されている場合、労基署に相談できる可能性があります。休憩や有給休暇取得に際し、以下のルールに反していないか確認してみましょう。

労働基準法により、労働時間が6時間以上8時間以下の場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を取らせなければならないと決められています。また、有給休暇は理由を問わず従業員が希望するときに取得でき、事業に支障が出るなどよほどの事情がなければ会社は有給取得を拒否したり取得時季を変更させたりすることはできません。

4.退職したいのに辞めさせてもらえない

憲法で職業選択の自由が保障されているため、誰であっても退職の自由があります。そのため、適切に退職の意思を伝えたにもかかわらずどうしても退職させてもらえない、必要な手続きに応じてもらえないといった場合は労基署またはハローワークに相談することができます。

5.労災保険の受給を拒否される

従業員を雇用する事業所は労災保険への加入が義務付けられており、労働者は雇用形態にかかわらず労働災害(業務災害・通勤災害)があった場合は労災保険を受給することができます。労災保険の請求は会社(事業所)を通じておこなうことが一般的ですが、会社が協力してくれない場合は労基署に相談することができます。

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2.労働基準監督署に相談しても意味ない? 

労働基準監督署で対応できない問題もある 

上述のように、労基署での対応は労働基準関係法令の範囲内となるため、組織体制上労基署で相談できないこと、またはほかの機関での相談が適しているケースもあります。

労基署以外の相談先が適しているトラブルの例

パワハラ、セクハラ、マタハラ、雇い止めの相談

パワハラなどの職場における民事上のトラブルや、セクハラやマタハラなどの性別による差別や不利な扱いを受けた場合は、各都道府県の「雇用環境・均等部(室)」に相談しましょう。

雇用環境・均等部では以下の法律に関わる問題解決を支援しています。ハラスメントの問題のほか、育児・介護休業の取得に関して不当な扱いを受けたり、契約社員などで5年以上雇用契約を更新しているのに無期転換ルールの適用を拒否されたりした場合も、相談の対象となります。

〈雇用環境・均等部(室)で扱う法律〉

男女雇用機会均等法育児・介護休業法パートタイム・有期雇用労働法労働施策総合推進法

異動や普通解雇、懲戒処分

正当な理由のない即時解雇など会社による不当な解雇を除き、懲戒処分や異動などの問題がある場合は、各地の「総合労働相談コーナー」に相談しましょう。専門の相談員が電話か面談で相談に応じ、必要な場合はほかの行政機関に案内します。