近年、ロゼワインは世界的にも大人気だ。多彩なスタイルのロゼが誕生する中、エレガントで繊細な“ワンランク上のロゼ”として異彩を放つのがフランス・プロヴァンス地方の「セント マルガリート アン プロヴァンス」だ。この10月にワインメーカー兼CEO(最高経営責任者)のオリヴィエ・フェイヤール氏が来日し、その魅力を語ってくれた。
プロヴァンス地方のロゼといえば、海辺のリゾートや風と光に満ちた休日などに軽やかに楽しまれるイメージがある。フレッシュな飲み心地とチャーミングな果実味が印象的で、アペリティフ(食前酒)として登場したり、あるいはシーフードなどの軽やかな一皿と合わせることも多い。だが「セント マルガリート アン プロヴァンス」のロゼはひと味違う。
今年リリースされた『セント マルガリート ファンタスティック ロゼ 2023年』は、フレッシュ感に満ちた飲み心地がプロヴァンスのロゼらしさを如実に物語るが、凛として品格あるスタイルが強く心に残る。優雅な果実味と繊細な酸味、そして豊かなミネラルが“ロゼ=カジュアル”というイメージを覆すのだ。特徴的なのがタンニンで、緻密ながらもシルキーなタンニンは、まるで天女の羽衣を想像させる繊細さ。オリヴィエ・フェイヤール氏はこう語る。
「私たちのワインは、まず、バランスが美しいことを大切にしています。セント マルガリート ファンタスティック ロゼ 2023年は、グルナッシュ、サンソー、ロール(ヴェルメンティーノ)の3品種を使い、そして異なる畑のブドウをアサンブラージュ(ブレンド)しているので、それぞれの品種の個性を生かしつつ、果実味と酸味、そしてミネラルが美しく調和するよう心掛けています。また、(取材における試飲後に)タンニンの抽出が繊細だと言っていただいたことは、とてもうれしい。実は、それこそが私たちの目指すスタイルでもあるのです。タンニンの繊細さは、まずはグルナッシュ、サンソー、ロールの3品種を使っていることが理由の一つ。3種とも果皮が薄いので、抽出されるタンニンは軽やかになるのです。また、二つ目の理由は、搾汁方法に細心の注意を払っているから。バルーン式圧搾機(*)でゆっくり時間をかけてやさしく搾汁しています」
*タンクの中のバルーンが膨らみ、その空気圧でブドウを搾汁する仕組みのプレス機
もちろん、ワイン造りで工夫を凝らしているのはこれだけではない。ブドウ栽培はすべてオーガニック。殺菌剤、殺虫剤、除草剤を一切用いず、肥料はすべて植物性のものを使用する。2003年にはオーガニック・ヴィーガンの認証を取得している。
「2023年は、春の雨に悩まされた年でした。雨が多いと病気になりやすいので、畑をこまめに回り、細やかに観察しました。また、夏には熟度が上がりすぎないよう、酸度の高さを保つために、水やりにも気を配りました」とフェイヤール氏。
また、フェイヤール氏曰く「あえてヴィンテージによって味わいに差異がないように造っている」という。基本的に天候に恵まれたプロヴァンスでは、ヴィンテージとは「今年の出来」のような意味で「大切なのはあくまでも味とバランス」と話す。
セント マルガリ―ト ファンタスティック ロゼ 2023年の魅力の一つは、ガストロノミックなワインであることだろう。キリッと冷えた最初のひと口は、心地いい果実味と酸味が口中に広がる。そして、時間の経過とともにグラスの温度が上がってくると、果実味がふくよかさを増し、コクのある旨味が顔を出す。1本を通じて、アペリティフからメイン、デザートまで寄り添える懐の深さを持っているのだ。
フェイヤール氏は笑顔でこう話す。
「今回の2度目の来日では、寿司の名店や京都の老舗天ぷら店でペアリングを体験しました。確信したのは、私たちのロゼは素材を生かした繊細な日本料理と合うということ。日々、日本料理に親しんでいる皆さまになら、きっと私たちのワインの魅力を発見していただけると思っています」
今回の来日で、ますます日本が大好きになってしまったと語るフェイヤール氏。「またすぐ、日本に戻ってきます」と顔をほころばせた。
セント マルガリ―ト ファンタスティック ロゼ 2023年
Sainte Marguerite Fantastique Rosé
産地:フランス/プロヴァンス地方
品種:グルナッシュ、サンソー、ロール(ヴェルメンティーノ)
参考小売価格:4730円(税込)
白桃やナシ、ライチのフルーティーな香り。白い花や潮風を思わせるニュアンスも。豊かな果実味とピュアな酸味、繊細なタンニンを感じる。野菜や魚介類と幅広く合い、特にブイヤベースとは相性抜群。ボトルに描かれているのは南フランスを象徴するアーモンドの花で、フェイヤール氏の弟リオネル氏の作品。
問い合わせ先:ペルノ・リカール・ジャパン㈱ TEL. 03-5802-2756
text by Kimiko ANZAI