ガソリンの値上がりや値下がりに関するニュースは、家計への影響が大きいため、多くの人々の関心を集めています。実はそのガソリン代のおよそ4割が「税金」だということをご存じでしょうか? 本記事では、帝国データバンク情報統括部の『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』(三笠書房)より一部を抜粋、再編集して、具体的な数字を見ながら、ガソリン代の内訳を構造的に解説していきます。

ガソリン1リットルのうち〇〇円が税金!?

「ガソリン1リットルのうち〇〇円が税金!?」というテーマに迫ります。このナゾめいたガソリン価格の裏側には、さまざまな要素がからんでいます。では、なぜガソリンは高いのか、その内訳を構造的に知り、また、ガソリン補助金がどのような影響をもたらすのか、一緒にみていきましょう。

ガソリン価格は、非常に複雑な過程を経て設定されています。現在、ガソリン1リットルの価格は、①本体価格と②税金、また③補助金で構成されています。

まず、①本体価格は、原油のCIF(運賃、保険料、為替変動を含む)価格が基盤となります。CIF価格は、一般的には貿易に関する取引価格のことです。この価格に、精製から販売に至るまでの各種運営コストが加わってきます。

具体的には、原油をガソリンに精製する「精製費」、緊急時の備蓄に必要な「備蓄費」、さらに「自家燃費」や「金利」、「輸送費」、「販売管理費」などのほか、石油元売り会社のブランド価格や、ガソリンスタンドへの配送コストも加算されます。

次いで②税金です。ガソリンには「ガソリン税」「石油税」、そして「消費税」がかけられています。ガソリン税は、1リットル当たり53.8円になります。これには「揮発油税」と「地方揮発油税」として28.7円がかけられ(本則税率)、さらに暫定税率の25.1円も加えられています。

暫定税率は、1974年に道路建設の財源不足を理由として上乗せされた臨時の税金です。ガソリン税の暫定税率は長期にわたり継続し、道路特定財源として道路を造り続ける仕組みとなっていました。

そこで、いつまで暫定税率を続けるかについて見直しが行われ、2010年4月に廃止されました。しかしその後、同額分の特例税率が創設され、25.1円分の暫定税率分は現在も徴収され、使用目的も道路財源ではなく、特定の使い道を定めない一般財源に充てられています。

また石油税は、1リットル当たり2.04円の「石油石炭税」と、0.76円の「温暖化対策税」が含まれ、合計2.8円になります。

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ガソリン代の内訳…ガソリン税と石油税は常に同一金額

ガソリン税と石油税は、ガソリン本体価格がいくらであっても同一の金額がかかっています。つまり、「ガソリン価格が上がった」というのは、ガソリン本体価格が上昇したことを意味するのです。

これらの本体価格と税金を合計した金額に、10%の消費税が適用されることになります。したがって、1リットル当たりのガソリン価格=本体価格+ガソリン税(28.7円、本則税率)+ガソリン税(25.1円、暫定税率)+石油石炭税(2.04円)+温暖化対策税(0.76円)+消費税、で構成されています。

[図表]レギュラーガソリンの本体価格と税金合計

例えば、レギュラーガソリンが1リットル当たり180円の時の税金の内訳を確認してみましょう。ガソリン税(本則税率28.7円、暫定税率25.1円)と石油税(2.8円)はガソリン価格にかかわらず固定です。

また、原油価格等により変動する本体価格は107円です。これらの合計額に消費税率10%分の16.4円がかかってきます。したがって、レギュラーガソリン1リットル当たり180円の時、税金は73.0円となり、全体の41%を占めていることが分かります(図表)。

2024年4月8日時点で、レギュラーガソリンの全国平均価格は175.0円です。過去最高値(186.5円)を更新した2023年9月4日時点より10円ほど値下がりしているものの、引き続き170円を超える高値が続いています。

ガソリンなどの燃料は経済活動や日常生活に不可欠であり、価格動向が景気に与える影響も大きいため、その動向には注目が集まります。
 

帝国データバンク情報統括部