米国の民主政治は終わるのか?
今回の米大統領選挙の構図は「多様性の信奉者vs.排外主義者」というよりも、「エスタブリッシュメントvs.一般庶民」や「一般有権者vs.非合法移民」です。
過去1年(2024年8月時点)で米国のフルタイムの労働者は102万人減り、パートタイムの労働者は105万人増えました。また、米国生まれの労働者は131万人減り、外国生まれの労働者は124万人増えました。
これらは米国の一般有権者から「時間いっぱいの雇用」が失われていることを示唆します(→念のために補足すると、米労働統計局の数値に基づくと、現政権発足以降、2024年8月末までに、米国の移民は「576万人の増加」です。前政権時の同じ時期は「66万人の増加」でした。こうした数値は、誰が分断を助長しているのかの判断材料となるかもしれません。付け加えれば、移民の増加は「明日の日本の姿」でもあります)。
これは、エスタブリッシュメントにとっての自業自得であり、アラームです(→イーロン・マスク氏は、仮に不法移民に選挙権を付与するようなことが起きれば、『スイング・ステート』がなくなって、米国が事実上の一党独裁になり、米国では民主政治が終わると危惧しています)。
FRBは選挙を目前にして、大幅な金融緩和によって一般有権者に「時間いっぱいの雇用」を再びもたらし、対立構図の目隠しと現統治体制の維持に努めているのかもしれません。他方で、一般庶民たちは、エスタブリッシュメントたちの所業に気づき始めているようにも見えます。
仮に、FRBの緩和バイアスが「株高やエスタブリッシュメント自身のためではない」としても、少なくとも中央銀行が「雇用の最大化」を目指すことで、インフレや格差拡大といった統治体制の根幹を揺るがすリスクを冒している現状は極めて危ういと考えられるでしょう。
この世界で、自分自身の購買力や健康を守るのは自分の力のみだと筆者は感じます。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト