妻から男性に「身体的な暴力」が振るわれている

妻が夫に暴力を振るうとき、具体的にはどういった「暴力」が行われているのか、気になる方も多いでしょう。「言葉の暴力が多いのでは?」と思う方もおられるでしょう。確かに言葉の暴力もありますが、最近では妻が実際に夫へ「身体的暴力」を振るう事例も多くなっているようです。

たとえば2018年、妻から暴力を受け続け、夫が耐えかねて妻を殺害してしまった事件がありました。その事件の被告人である銀行員は「妻から髪の毛を引っ張られ、引きずられたり顔面を殴られたり、土下座を強要されて蹴りつけられた」などと話しています。

それ以外にも、男性が妻から「拳で殴られた」「物で殴りつけられた」などの事例は少なくありません。「女性だから男性に身体的暴力を振るうことはない」というのは世間的な思い込みとなりつつあるようです。

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妻のDVで男性が離婚を求め…

日常的に妻から暴力を受けている場合、男性側から離婚請求できるのでしょうか?

協議離婚、調停離婚なら問題なく離婚できる

まず協議離婚や調停離婚であれば、問題なく離婚請求できます。これらは話し合いによる離婚の方法なので、妻さえ納得したら理由はなんであっても離婚が成立するからです。

訴訟では婚姻を継続し難い重大な事由が必要

一方、妻が「絶対離婚しない」などと強硬に主張するケースもあるでしょう。その場合には、訴訟によって離婚を認めてもらう必要があります。法律が訴訟による離婚を認めるのは、以下の5つのケースに限られます。

・不倫
・悪意をもって相手を見捨てること
・3年以上の生死不明
・回復しがたい精神病
・その他婚姻を継続し難い重大な事由

女性がDV被害を受ける場合、多くのケースでは5番目の「婚姻を継続し難い重大な事由」と評価されて離婚原因と認定されています。婚姻を継続し難い重大な事由は、不貞や悪意の遺棄、3年以上の生死不明などに準じる程度の重大な問題により夫婦関係が破綻してしまった場合に認められます。

男性がDV被害者の場合にも、妻による暴力が酷すぎてもはや夫婦関係を継続するのが不可能となってしまったら、婚姻を継続し難い重大な事由が認められて離婚できる可能性があります。ただし、暴力の程度が軽い場合には離婚原因にはなりません。どういった場合に離婚できてどういった場合にはできないのか、みてみましょう。

男性がDV被害を受けて離婚できる可能性が高いケース

・妻から顔面を拳で殴られてけがをする、その程度の暴力が日常的に行われている
・妻から土下座をさせられて蹴りつけられ、流血するけがをした、その程度の暴力が日常的に行われている
・妻からバットで殴られてけがをした、日常的に同程度の暴力を振るわれている

離婚が認められるには、けがをするほどの酷い暴力があり、それが日常的に繰り返されていることが必要です。

男性が暴力を振るわれても離婚できない可能性が高いケース

・妻から平手で殴られた
・妻が暴れるので制止するのにけがをした
・妻から1回蹴られた

このような軽い暴力の場合や、暴力を振るわれた回数や頻度が少ない場合には離婚原因と認めてもらえない可能性が高くなります。