「スタバのバイトがキツい」は本当?まことしやかに囁かれる噂を元バイト店員が解説

 はじめましての方もはじめましてじゃない方もこんにちは。元スタバ店員でミニマリストの阪口ゆうこ(@sakaguchiyuko___)です。


 スターバックスもこの時期からが本番といったところ。秋冬のかっ飛ばし方は今年も目が離せない。

 ところで、皆さんはこんなに目まぐるしく新商品を発売するスターバックスに「スタバのスタッフはいつ勉強してるの?」と疑問に思ったことはないだろうか。それと同時に、まことしやかに囁かれる「スタバのバイトってキツいらしいよ」という噂の一部分を今回は紐解いていこうと思う。なお、本記事は筆者が働いていた2010~2022年の体験をもとにしていて、現在とは異なる可能性があることをあらかじめご了承ください。

◆覚えることがとにかく多い

 スターバックスでの仕事について、ダントツでよく聞かれたのが、「スタバって覚えることいっぱいあるんでしょ?」。そう聞かれる時の相手の顔はいつも憂いに満ちていた。

 ちなみに私は堂々と「ええ、覚え切れません」と答えていた。実際、私は覚え切れなかったからだ。

 あの膨大な数のドリンクの、しかもドリンク4サイズ分となると、かなりの数のレシピを覚えなければならない印象だろう。しかし、レシピには法則があるので、そこでつまづくアルバイトは少ない(私はつまづいたけど)。

 レシピを覚えるのは基本中の基本で、それ以降の、「カスタマイズまでルール通りに正しく迅速に作ってお客様に提供する」というところからスキルが必要になる印象だ。

◆次々と始まるプロモーション

 次々と新発売されるプロモーション商品のことも頭に入れておかなければならない。スタッフにだけ前もって解禁される新プロモーションの情報を読み込んで、発売までに覚えなければならない情報の量は、正直言ってえげつない。

 まずは、プロモーションのテーマと、プロモーションにかける思いをインプットする。

 そして、期間限定のコーヒー豆の情報、ドリンクやフードのレシピ、限定販売のタンブラーやマグカップのようなアイテムのラインナップや注意点。それと同時にキャンペーンなんかも始まったりするもんだから、キャンペーンをお客様に説明できるまで理解しておく。

◆勤務が終わっても黙々と資料を…

 どのスタッフも脳みそのキャパシティは必ず2度ほど溢れることになっている。情報が膨大な量ゆえに、勤務時間内に覚え切れず自己学習にするスタッフも少なくない。勤務が終わって帰宅する前に、黙々と資料を読み込む仲間の姿を常に見ていた気がする。

 ちなみに私は、前もって学習しているにもかかわらず、当日ギリギリまで穴が開くほど資料を読んでいた。私という人間は、ごく稀に見る記憶力が欠落しているタイプなのだが、仲間はいつも優しかった。その優しさが生まれるのも「片手間では覚えられねえ」という情報量だからだ。

 もちろん新しいドリンクだけでなく、フードも前もって試食している。新しいプロモーションの冊子やPCの情報を読みながら、できるだけ「自分の言葉」で表現できるまでが求められるのだ。

 公式での説明は当たり前のように一度頭の中に入れる。それはもちろんのこと、自分の第一印象はどうだったか、自分の好みと商品がマッチしているか、どんなお客様におすすめするのが良いと思うか、さまざまなことを仲間内でも話し合いながら、接客に繋げていくのだ。

◆水面下では次が始まっている

 しかし、毎月のように新プロモーションが始まるスターバックス。水面下では、プロモーションが始まったと思ったらすぐに次のプロモーションの情報が解禁になっているのだ。今現在、秋のプロモーションを開催しているが、スタッフの頭の中は次の「ホリデープロモーション」でいっぱいなはずだ。


 ホリデープロモーションは、知る人ぞ知る「祭」。クリスマスの期間のこと。スターバックスの1年で、いちばん盛り上がるプロモーションだ。期間限定で発売されるドリンクやフードの数もアイテムも、控えめにいって狂っている。一発で覚え切れない情報量を前に仲間は毎日学習を重ねて覚えていた。私は覚え切れないからカンペを作っていた。毎年暑いうちから情報解禁されているのに。

 ちなみに、退職してから気づいたのだが、お客さんとして参戦するホリデープロモーションは素晴らしく隅々まで煌びやかで楽しい。そして、あの舞台裏の努力があってのホリデーだと思うと感慨深い。

 このように常に学習が必要なところを「キツい」と言われている可能性がある。そして、それと同時に求められる接客レベルも高いために、労働意欲が高い人でないと「キツい」と感じるのかもしれない。

◆オシャレなバイトだと思っているとキツい?

 スタバのバイトがキツイと言われる具体的な理由として、前述のような「覚えることがたくさんある」の他に、求められる接客レベルが高いという点がある。しかし、スターバックスには接客のマニュアルがない。


 入社するとすぐ待っているのが、1〜2か月かけての研修なのだが、まずはスターバックスのミッションと称し、スターバックスのあるべき姿やこれから目指すべき姿をスタッフ全員の共通認識としてインプットする。これは、他の企業でいう「理念」に近い。

 そして、同じ方向性を掴んだら、お客様に対して自分はどのように行動すべきか自発的に考える。このパターンはこう動く、このシーンではこう声をかける、というような細かなルールはない。接客は研修で具体的に教わらず、先輩からアドバイスをもらったり実践で学んでいくのだ。

 そして、自分で考えて動いた結果お客様に喜ばれると、強烈な喜びとやりがいを得られる。このあたりを経験し始めると、時給と仕事のバランスなんてものはどうでもよくなる。そして、時給がどうでもよくなると、やりがいを求めて仕事にハマっていくのだ。

 次々と学習と暗記に迫られながらも、お客様に喜んでもらえる接客を自分なりに考え心がける。この自主性が問われる部分が「キツい」だとしたら、働くのを考え直したほうがいい。ブランドイメージに憧れを抱いて入社する人もたくさんいるが、それだけで何年も続いている人はごく稀だ。

 スターバックスの多くのスタッフが自主性の奥にあるやりがいを感じて働いているのは確かである。

<TEXT/阪口ゆうこ>

【阪口ゆうこ】

1981年生まれ。整えアドバイザー。片付けや整えについてのブログ「HOME by REFRESHERS」を運営。コラムなどの執筆、セミナー開催を行う。著書に『ゆるミニマルのススメ』などがある。好きなものはビール、宴会、発信すること。嫌いなものは戦争、口内炎、マラソン。Instagram:@sakaguchiyuko___