ロイヤル顧客の育成による売上安定化 新規開拓ではなく、顧客育成が重要な理由〜パレートの法則〜

まず1つ目の「ロイヤル顧客の育成による売上の安定化」という観点から説明していきます。

顧客中心の経営を実現するために、顧客の声に耳を傾ける。これは、新規開拓よりも既存顧客の育成に注力することを意味します。決して新規開拓が不要であるとは言いませんが、費用対効果は、顧客育成のほうが大きいと、私は考えます。なぜなら、ロイヤル顧客の売上貢献度は、想像以上に大きいからです。

これは、有名な「パレートの法則」で説明ができます。パレートの法則とは、20%の要素が全体の80%を生み出しているというもので、「2:8の法則」とも呼ばれます。これを企業に置き換えると、20%の顧客(ロイヤル顧客)による売上が、売上全体の80%を占めているというわけです。

私も初めてこの法則を聞いたときは、にわかには信じられませんでした。「たった20%の顧客だけで事業が成り立つ? まさか」。しかし、この法則は多くの事業、サービスで当てはまっていることが証明されています。

そして、パレートの法則を大きく上回る企業もあります。ファンマーケティングで有名な「カゴメ」は、上位2.5%のユーザーが売上の30〜40%を占めていると言いますし、クラフトビールで有名な「ヤッホーブルーイング」もやはり、上位10%のユーザーが売上の60%以上を生み出していると言います。つまり、20%にも満たない超ロイヤル顧客が企業の命運を握っている時代なのです。

株式会社ヤッホーブルーイングで顧客調査/体験設計の責任者を務めるジュンジュン氏(佐藤潤氏)は、ロイヤル顧客による売上貢献について、次のように話しています。

「弊社ではお客様のブランドロイヤルティを『ぞっこん度』という指標で定量的に捉えています。『なんとなく飲んでいる』から『すっかりハマっている』までの5段階でお客様のお気持ちを確認しています。その結果、上位と下位では購入額に10倍以上の開きがあり、上位のロイヤルティの高いお客様が会社の売上/利益を支えてくださっているのは確かです」

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ロイヤルティの高さは、購入額、購入回数に直結する

ロイヤル顧客が売上の大部分を占める仕組みについて、図をもとに解説します。[図表1]は、顧客のロイヤルティを三角形で分類したもので、上にいくほどロイヤルティが高いことを示しています。なお三角形の下には、見込み顧客、潜在顧客が広く存在しています。



[図表1]

ロイヤル顧客(=熱狂的なファン)になればなるほど、購入額や購入回数は増えていきます。新商品が出るたびに購入してくれたり、自分の生活になくてはならないと、何度もリピート購入してくれたりします。飲食店も同様です。全国チェーンの外食産業などもロイヤル顧客が店舗の売上を支えてくれているものです。これは、疑う余地のない事実であり、多くの方にとっても納得感のある話なのではないでしょうか。