ロイヤル顧客は、企業・ブランドのサポーター

さらに、ロイヤル顧客は、企業・ブランドのファンですから、ときに企業の代弁者となって、SNSで発信したり口コミしたりすることによって、新しい顧客を連れてきてくれる効果も発揮します。

つまりロイヤル顧客は、売上だけでなく、マーケティングにも協力してくれる最強のサポーターなのです。ロイヤル顧客にフォーカスすることで、新規開拓も同時に実現できる。彼らがSNSで発信したレコメンド(推奨の声)、これを「リファラル」と呼び、口コミによる拡散効果の重要指標として注目している企業もあります。

これは、まさに「類は友を呼ぶ」状態。距離感や価値観が近いユーザー同士は、似たような趣味、思考を持つ傾向があり、同じようにロイヤル顧客になりやすいのです。「類は友を呼ぶ」。ロイヤル顧客マーケティングにおいて、これは非常に重要な概念です。ロイヤル顧客に向き合い、共創しながら事業活動を続けることで、ファンがファンを呼び、自然とその輪が大きく広がっていくわけです。

また、マーケティングの世界でよく知られている「1:5の法則」からも、ロイヤル顧客マーケティングの有効性は明らかです[図表2]。



[図表2]

この法則は、新規顧客の獲得コストが、既存顧客にリピートしてもらうコストに比べて、5倍かかるという経験則です。つまり新規顧客に対して、躍起になって手を尽くすよりも、既存の顧客にアプローチして、リピーターになってもらう努力をするほうが事業成長に結びつきやすい、ということになります。

このように、ロイヤル顧客に経営資源を集中することは、経済合理性の観点からも、非常に有効であると言えます。

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ロイヤル顧客からの推奨による新規顧客の獲得〜ロイヤル顧客から広がる、信頼と共感〜

続いて、2つ目の「ロイヤル顧客からの推奨による新規顧客の獲得」という観点について、考えてみましょう。

マーケティングリサーチ会社の株式会社アスマークが全国の20代から50代の男女に「情報取得に関するアンケート調査」を実施したところ、全世代で信頼できる情報ソースは「友人・知人・家族」がトップ、次いで「専門家」「有識者」の順という結果が出ました。この結果から、現代ユーザーは専門家よりも、友人や知人・家族など、自分に近い存在からの情報を信頼していることがわかります。

熱狂的なファン=ロイヤル顧客は、まるで企業の代弁者のように、SNSで発信したり、近しい人々にブランドや商品を紹介したりしてくれるという特徴を持っています。それにより、ロイヤル顧客の周囲の人々もその声に共感、反応し、新しい顧客となりやすい。これが積極的なシェア(共有)のステージの効果です。

長くなりましたが、「顧客中心の経営」の必要性、重要性がお分かりいただけたのではないでしょうか。

小父内 信也

株式会社Asobica

取締役CCO