グローバル化が進むなか、我が子によりよい教育を、と学生時代に海外留学をさせる親が増えています。しかし、一生日本で暮らしていくのであれば、海外での生活を送る留学なんて必要ないのでは?という考えもあるでしょう。本記事では、尾﨑由博氏の著書『アフターコロナの留学』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集し、これからの時代を生きる我が子の選択肢の一つとしての海外留学について解説していきます。
日本国内にいても国際化はやってくる
たとえ人口が減って経済の活力が落ちても日本にいるほうがいいよ、という方もおられるかもしれません。日本国内で日本人とだけ付き合うなら留学なんかいらないじゃないか、という意見をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
[図表]はNHKがまとめた日本国内に暮らす外国人の方の人口推移です。パッと見てわかる通り、過去30年で我々の周りにすむ外国人の数はどんどん増えています。皆さんが好むと好まざるとにかかわらず、日本国内の国際化は進んでいくということを意味しています。
そして今、日本国内でも多文化共生が課題になっている地域が増えてきています。これは地域で暮らす外国人の方と地元の方の間でしばしば、いさかいが起こることが背景にあります。外国人の方が日本式の生活習慣、地域の伝統に適応する必要があると同時に日本人の方も外国の方が慣れ親しんだ暮らし方や考え方を理解する努力が必要です。
自分たちの居心地のよい環境を維持するために、日本人同士でもお互いの思考や暮らし方、なぜそうしたいのか、を意見交換するように外国人の方とも意見交換は必要です。その際に、多少なりとも皆さんが「外国人」として海外で暮らした経験があるとコミュニケーションの役に立つとは思いませんか。あるいは地域の中で留学を経験した方々が多文化共生の中心的役割を担うことができれば、よりスムーズにみんなが快適に過ごせるかもしれません。
人生の早い段階で世界各地の様子を知っておくこと、様々な考え方をする人がいて日本とは違う生活習慣・文化があることについて身をもって体験しておくことは、決して損にならないのではないかと思います。
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外貨を稼げる人材は圧倒的に有利
この本を執筆している2022年夏は急速な円安が進んでいた時期です。日本国内だけで暮らしていると、なかなか円安の意味合いがつかみづらいのですが、いざ留学して海外で暮らしてみると、円安は皆さんの現地生活に深刻な影響を及ぼします。
例えば、1ドル=80円だった時期(1990年代後半/2010年代前半)に海外留学されていた方は15ドルのランチを食べる際、頭の中で「1,200円ね」と計算して食べていました。しかしながら、2022年の今、海外で留学されている方は、15ドルのランチといえば「2,000円以上もする‼」と思いながら食べなければなりません。皆さんが日本に帰国した後もこの円安、円高の影響は続きます。
円の価値が高い=円高の時には、日本国内で仕事をして日本円で給料を受け取った場合、毎月30万円の手取りがあったとして、1ドル=80円ならば3,750ドルの収入という計算ですね。しかしながら、これがもし1ドル=140円になったらどうでしょうか。日本円では同じだけの給料をもらっているはずなのに約2,100ドルの収入にしかなりません。
本題はここから。皆さんがもし日本語しか話せず、日本国内でしか仕事ができない存在だったらどうでしょうか。お給料も日本円で受け取るという選択肢しかありませんので円安が進んだ場合には海外旅行に行く時や、海外から輸入されている物品を購入する際には値上げを甘んじて受け入れなければならない立場になります。
しかしながら、もし留学を経て日本以外でもお仕事ができる、海外の会社でも活躍できる存在になれたとしたら……。そう、ドルやユーロなどの外貨で給料を受け取るという選択肢だってあり得るのです。
日本円でも外貨でも収入が得られる立場になる、というのは一つの理想的なキャリアプランです。これができれば世界がどう変化しても、皆さんが生きる場所の選択肢を広げ、経済的自由を確保することにつながるためです。
学生の頃から留学し、海外で生活する際に必要な金額/日本との物価水準の違いなどについて身をもって経験しておくことはメリットしかない経験だと思います。
尾﨑 由博
海外安全管理本部/海外安全.jp代表