会社は社員が頑張るだけでは儲かりません。どんな目標のために・なにをすればよいか「会社のビジョン」を決定し、その計画の一環として現在の経営・業務を行うことが重要です。今回は経営コンサルタントの石原尚幸氏が具体的な相談例と共に、親族経営をしている経営者に向けて「会社にビジョンが必要な理由」を解説します。
「ビジョンって作ったほうがよいですか?」
「ビジョンって作ったほうがよいですか?」
親族経営をしている経営者からよく聞かれる相談です。あなたの会社にはビジョンがありますか? 結論、私の顧問先ではビジョンを定めています。私のコミュニティや勉強会に参加する人たちにもビジョンを作りましょうとお伝えしています。それはビジョンが会社を存続させ、成長させるためには必要だと考えているからです。
そこで今回は、そもそもビジョンとはなにか? なんのために必要なのか? ビジョンがあるとどんなよいことがあるのかをお伝えします。ビジョンを作りたいとは思っていたけれど、どうもよくわからない。一度作ったけれど机の引き出しにしまったまま……という方は、ぜひご一読ください。
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ビジョンがないことで「低迷スパイラル」に陥っていたA社
創業50年を迎え、地元では名の通ったA社。2代目K社長から「自分も社員もがんばっているのに儲からない。どうしたら会社がよくなるか一緒に考えてほしい」との依頼を受けました。
内情を見てみると、社員さんは真面目で皆さん頑張っています。でも、利益は残らない……その原因を探ると1つの要因が見えてきました。
厳しい経営環境のなかですから、とにかく生きていかねばなりません。「目先の目標を達成するぞ!」と本社からは号令が出ます。特に策がないため、現場ではお願い営業と価格競争に巻き込まれ、叱咤激励をしながら気合いで乗り切ろうとします。
その結果、組織は疲弊し、人が定着しません。習熟度が上がらないため生産性は低く、利益も残せない。利益が出ないから目先の目標に追われる……このように、頑張っても頑張っても利益が出ない「低迷スパイラル」に陥っていました[図表1]。そして、この低迷スパイラルを断ち切らないことには、業績は回復しないことがわかってきました。