ビジョンを再構築し「ビジョン実現サイクル」へ転換
このスパイラルを断ち切るべく、スパイラルのスタート地点に戻って経営を見直すことにしました。
スパイラルのスタート地点は「目先の目標」を立てている点です。人は目先の目標だけでは頑張り切ることはできません。アイデアを出せと言っても、出てくるのは過去に行った策の上書き程度でしょう。斬新なアイデアは期待できません。
その逆に、人はわくわくする未来があることがわかれば、頑張ろうとする気持ちがわいてきます。イメージしてみてください。3ヵ月後に海外旅行に行くことが決まったとしたらワクワクしますよね? 観光地に行ったら何をして遊ぼうか? どんな交通手段があるか? などなど考えますよね。経営も同じです。
わくわくした未来を設定することで、そこに集うメンバーもやる気となり、そのわくわくした未来を実現するために何をしたらよいか自発的に考え始めます。そこで、社長と合宿を行い、目先の目標ではなく、中長期(3年後~10年後)の目標を定めることにします。この中長期の目標を「ビジョン」と呼びます[図表2]。
社長との議論した結果、10年後に業界ナンバー1の利益を上げる、社員の給与を倍にする、保養所を作る、海外社員旅行を実現するなど、わくわくする未来を定めることができました。
このビジョンを実現するために、戦略(誰に、何を、どこで売るか)を定め、お願い営業と価格競争と決別することを決意します。気合系のマネジメントは排除し、計画→実行→検証を科学的に繰り返すPDCAサイクルを定着させました。次第に定着率は改善していきます。
ビジョン実現のために計画的に育成プログラムを作ります。ビジョンを表明していくことで、一緒にビジョンを実現したいという社員も採用できるようになりました。このサイクルを継続することで3年。
頑張っても頑張っても利益が残らなかった会社が、ビジネスモデルは変えることなく利益が1億円を超えるまでに成長しました。私はこれを「ビジョン実現サイクル」と名付けました。
低迷スパイラルをビジョン実現サイクルへ転換できる、これがビジョン構築の最大のメリットです。
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ビジョンとは改めてなにか?
改めてビジョンを定義すると、「ありたい姿を言語化し数値化したもの」と言語化できます。
ビジョンを定めましょうとの提言をすると、「ビジョンで飯が食えるのか?」という疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。この意図は、「なにが起こるかわかりもしない未来の話をしたところで、いったいそれで売上や利益がのびるのか?」でしょう。よくわかります。
ですが、先の事例のように低迷スパライルをビジョン実現サイクルへ転換するためにはビジョンの再構築は必須です。さらに具体的には次の2つの観点から、ビジョンには定める意義があります。