ビジョンを定める2つの意義とは?
まず1つ目の意義は「わからない未来を見える化できる」点です。
未来のこと、それがたとえ明日のことであっても人は予知することはできません。ましてや10年後の未来などわかるはずもないです。では、それにもかかわらず、なぜ10年後の姿を描くのか。
それは山登りに例えればわかりやすいでしょう。山に登る際に、そもそもどの山に登るのかも決めずに登れますか? 無理ですよね。そして、登る山が定まったとしても、その山までの距離と高さがわからなければ、どれだけの準備をしていけばよいかすらわかりません。
つまり、登りたい山までの距離と高さがビジョンとなります。登りたい山がわからなければ登りたくても登れないのと同じように、ビジョンがなければ組織は方向性を見失い、ビジョンを実現したくても実現できません。
ビジョンを作るもう1つの意義は、「課題が見える化できる」点です。
逆説的ですが、未来のビジョンを定めることで、今やるべきことが明らかになります。ビジョンを立てる際には、理想的な状態を先に想像します。理想的な状態とは「心からそうなりたい」と思う姿です。
売上・利益はいくらで、そのためにどんなモノやサービスを売り、どんな組織を作り、どんな人を仲間にし、その結果、世の中や社員、顧客にとってどのような存在となっていくかを数字と言葉で表現していきます。
これは、「イメージストリーミング」という脳科学のノウハウを採用しています。人は現状の延長線上の目標を立てるだけでは、脳が新しい挑戦をしようとせず、結果的に目標達成が難しくなると言われています。
これを克服するためには、現状の延長ではない「ぶっ飛んだ」目標(例えば売上を倍にする、シェア1位になる等)を立てることが脳科学的には有効とされています。そうすることで、脳は新しい行動を促し、目標達成に向けて積極的に動き出すようになるとされているからです。
こうしてビジョンを定めれば、必然的に現状とのギャップが生まれます。例えば現在の売上が100で、ビジョンを200としたとします。そうすれば▲100がギャップとなります。このギャップが生まれると、人の頭は「このギャップをどうしたら埋まるだろう?」と考え始めます。こうなればしめたものです。
▲100のギャップを埋めるためには、新しい客層を開拓しよう、新しい商品を増やそう、セールス力をもう一段アップしようなど、今やるべき課題がたくさん浮かんできます。これが「課題の見える化」です。
現状だけを見て、どうしようどうしようと言っている間は、課題は見えてきません。課題を見つけたければ、ビジョンを定め、現状とのギャップを掴むことが早道です。
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実際にビジョンを作るときに気をつけること
ビジョンを作成する意義がわかったところで、実際のビジョンのワークをしてみましょう。まず10年後の自社をイメージしてみます。10年後の売上、利益、扱う商品、ターゲットとする顧客、活動エリア、組織、人員数や集う人のスキルやノウハウやマインド、財務体質を思うままに書いてみます。
このときに大切なのは、できるorできないで考えないことです。できるorできないで考えると、しょぼいアイデアしか出てきません。先述のように「イメージストリーミング」を活用し、先にぶっとんだ目標を立てましょう。
できるorできないはあまり意味がありません。なぜなら、いまのあなたにはできないことだとしても、世のなかを探せばきっとそれをやっている人はいます。つまり、いまのあなたがやり方を知らないだけで、やり方は存在しているからです。
ビジョンを描くときは、やりたいorやりたくないです。やりたいことを目一杯書いてみましょう。ここから、逆算して5年後、3年後、1年後の目標を立てていきます。脳は漠然としたオーダーより具体的なオーダーを実現しようとするため、売上や利益、社員数など、数値化できるビジョンは数値化することがポイントです。
また、ビジョンを策定する際には、会社側(経営者側)の視点だけではなく、社員にとっての理想の会社像や、地域社会における貢献視点からのビジョンを考えるとビジョンがみんなのものとなり、ビジョンが社内に浸透しやすくなっていきます。
さらに、経営者の場合、プライベートのビジョンも重要です。公私混同といって経営とプライベートを混同することが悪とされている現在ですが、経営者にとって公私は混同どころか一体です。全財産を投げうち、銀行借入の連帯保証まで捺印し、24時間会社のことを考えているのが経営者。プライベートがうまくいかなければ会社も上手くいきません。
プライベートの目標がないと、ある日突然「どうして俺はがんばっているんだろう?」とウルフルズの流行歌のように途方に暮れてしまいます。プライベートも遠慮せずビジョンを描くことで、会社を発展させる動機付けになっていきます。
このようにしてビジョンを立て、それに向けて逆算して目標を設定することで、目指すべき姿、そこまでの距離、高さ、さらにはビジョンを実現するための課題が明らかになります。ここまで明らかになれば、あとは行動あるのみです。
親族経営の場合、決まった社員が決まった商品を決まった顧客が売るため、どうしても日々を成り行きで過ごしてしまいがちです。会社を一定年数存続させるだけであればこれで問題はないでしょう。
ですが、もしあなたがいまの会社をもっとより良くしたい、5年、10年ではなく20年、30年、50年と続いていく会社にしたい思うのであれば、ビジョンの策定は必須です。上記を参考にぜひビジョン策定に取り組んでみてください。
石原 尚幸
株式会社プレジデンツビジョン 代表取締役