カフェは意外と、住宅街の中にひっそりと存在していることが多いです。もちろん都市部にも多いのですが、「みなさんの憩いの場所になってほしい」という店主さんの想いがこもった唯一無二の居場所作りは、生活の中にこそ生まれるのかもしれません。

今回紹介するカフェも、まさに住宅街の中にあるお店です。大阪市東成区・新深江駅にある「and. cafe」という人気カフェを取材しました。

飲食未経験からのカフェ開業。地元に根付いて子育てと両立。

「and. cafe」があるのは、大阪市東成区。新深江という駅を降りて、住宅地の中を5分ほど歩くと、マンションの1階に間口の広いお店が見えてきます。お店いっぱいに緑や花が飾ってあることから、遠くから見るとお花屋さんのように見えます。朝9時から営業しているとのことで、すでに朝ごはんを食べ終えたであろう常連の姿も。

オープンキッチンでお客様と会話しながらテキパキと営業をこなす、店主の大山友里さん。元々は専業主婦で、今も3人の子どもを育てるお母さんです。子育てしながら家の近くで働きたいと「and. cafe」を作ったそうで、飲食はまったくの未経験だったのだとか。


元々は10年近く空き倉庫だったという物件。大山さんのセンスが光るオシャレな空間です!


開放的で、自然の光を浴びながらカフェタイムができます

飲食未経験ながら、カフェを開いて約5年半。内装のアイデアも、店に飾るお花もすべて大山さんが手掛けているのだそうです。インスタグラマーがこぞって集い、遠くからでも「わざわざ行きたいカフェ」として人気を集めている理由とは?

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こだわりは「百貨店クオリティのフルーツ」。毎朝の仕入れに一切の妥協なし!

「and. cafe」の人気メニューは、フルーツをたくさん使ったパフェやサラダプレート、モーニングなど。インスタグラムのメニューアカウントを見て、オーダーします。

「私はプロの料理人でもパティシエでもありません。フルーツを加工してケーキやデザートにするのは専門の方たちにお任せして、私は私の得意なことでやっていこうと決めています。フルーツの魅力や旬の味をダイレクトに味わえるよう、そのまま盛り付けて。フルーツの瑞々しさというか、キラキラが映えるようにしています」

フルーツの仕入れは毎朝、自分で市場に足を運んでいるという大山さん。調理はしないからこそ、素材での真っ向勝負。市場でいかに美味しく「品質が高い」フルーツを選ぶことができるかが肝なのだそうです。

「なぜ美味しいのか、なぜ品質が高いのか?って少しの疑問も残さず市場で質問して、納得した上で仕入れています。フルーツって、スーパーの値段と百貨店の値段が全然違いますよね。やっぱり品質が全然違うからなんです。同じ品種でも産地や農家さんによって味の濃さ、甘さ、瑞々しさが違います。『and. cafe』は百貨店に並んでいるフルーツと変わらないクオリティのものを使っています。だから値段が高いと言われることも多いんですけどね」

こちらは長野県の須高地区で育てられた「シャインマスカットのほうせきばこ」。ぱりっとした実に爽やかで甘いマスカット、ソーダとヨーグルトのジェラートで盛り付けられています。リボンが可愛くデコレーションされていて、ありそうだけど意外と見かけない唯一無二のデザイン。見た瞬間に「可愛い!」とカメラを向けたくなります。SNSで人気なのも納得です。

「野菜を星形に切ったり、ご飯をクマさんにしてみたり、キャラ弁にしてみたり。子供のご飯って工夫しますよね。家庭料理の延長のような感覚で、その日仕入れたフルーツを盛り付けています。特別なことは何もしていないけれど、お客様の顔を思い浮かべながら『こうすれば喜んでくれるかな』って」

メニューが完成したら、まず自然光が一番綺麗に入るカウンターにディスプレイ。お客様がしっかり撮影を楽しんでから、席に運びます。

こちらは佐賀県産の黒いちじくを使ったオープンサンド。「いちじくな焼きしょくぱん」というもので、なんと4個分の黒いちじくを贅沢に盛り込んでいます!

横から見るとこのボリューム。トーストもまさかの超厚切りです。このパンも、「石窯パン工房 ベルフラン」というベーカリーで、毎朝石窯で焼いている食パンを使っています。もちもちとした食感で、じゅわっとバターが溶け込んで最高に贅沢なオープンサンド。マスカルポーネクリームも敷かれていて、ほんのりと酸味も感じられます。

フルーツが主役なので、もちろん季節によって使われるフルーツが異なり、仕入れにより産地・品種も異なります。季節の移り変わりとともに、大山さんがその日一番のフルーツを仕入れてくれるので「今日はどんなフルーツが食べられるのかな?」という風に通っても楽しめるカフェです。

「まさに、今通ってくれている常連さんはそんな感じで来てくれます。仕入れの時に常連さんの顔が浮かぶんです。『このいちじくはあの人に食べてほしいな』とか『週末にあの人が来てくれるって言ってたから、今から追熟させておこう』とか」

盛り付け方に特に決まりはなく、注文した人の雰囲気や話の内容、その日の気分などで少し変わることもあるそうです。相手を喜ばせたいという“愛”が、人気の理由なのだと感じました。