元ラブホ従業員が明かす、意外な“人間模様”。70代の高齢男性が1人で来店し…

 さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。

 今回は、大学生の頃にラブホでアルバイトをしていたという2人が仕事中に驚いた出来事を紹介する。

◆ラブホの仕事で見えた“人間模様”

「ラブホって一般的には“特別な場所”というイメージあると思います。実際に働いてみると、さまざまな人間模様があることを実感しました」

 樋口通さん(仮名・30代)は、今でも友人との会話のネタになる数々のエピソードを教えてくれた。

「私が勤めていたラブホでは、清掃とフロント担当に分かれていました」

 ある日、樋口さんがフロントを担当していた正午頃、70代ぐらいの高齢男性が1人で来店した。しばらくして、女性も入店し、男性と同様に1人でエレベーターに乗っていったそうだ。

「先輩に確認すると、“派遣のお姉さん”を呼ぶ手段だと教えてもらいました。ご高齢にもかかわらず、とてもお元気だなと思いました」

 また、清掃担当になった日には、思わぬ光景に出くわしたという。

◆ベッドの下から使用済みの“大人のおもちゃ”が…

「ベッドの下を掃除していると、使用済みの“大人のおもちゃ”がたくさん散乱していたんです。一瞬、何が起きたのか理解できず、あたふたしてしまいました」

 さまざまな種類があり、見た目からして使い古されていたようだ。

「驚きと戸惑いがありましたが、先輩に報告すると、『それはよくあることだよ』と言われ、『これがラブホで働くということなんだ』と思いました」

 また別の日には、女性が1人で来店した。

「待ち合わせなのかは分かりませんでしたが、女性は休憩時間を満喫し、1人で退店されたんです。清掃をしたスタッフに確認すると、『部屋は汚れていない』とのことでした」

 どうやら、その女性はテレビでお笑いライブを観るためにきていたという。樋口さんが働いていたラブホでは、お笑いライブが視聴できるケーブルテレビを契約しているようだ。

「お笑いファンの人が鑑賞しにくるんだそうです。ラブホはいろいろなお客様と出会えますね」

◆高額時給のバイトを探して見つけたラブホの客室清掃


 楠山裕二さん(仮名)は、学費や生活費を自分でまかなうためバイトを掛け持ちしていたという。

「それまで旅館の清掃、家庭教師、警備員、パン工場などのバイトを経験したのですが、時給が低かったんです。高額時給のバイトを探していたところ、ラブホの客室清掃を見つけて働き始めました」

 清掃業務は旅館で経験していたため、不安はなかったと話す。

「面接では、ラブホという場所柄、怖い人が出てくるのかと思ったのですが、店長は優しい方でした。オーナーは女性で、明るくて上品な印象でした。息子さんが医学部に通っているとも聞き、ラブホって、想像とはまったく違う人たちが関わっているんだなと思いました」

 一緒に働くスタッフも楽しい人ばかりだったそうだ。

◆同僚には日本舞踊の先生や料理人がいた

「思い出深いのは、日本舞踊の先生と料理人をしている2人ですね。2人とも兼業でラブホの仕事をしていました」

 特に日本舞踊の先生には厳しく指導されたようだ。

「先生は、『清掃はお客様のあとを絶対に残してはいけない』と、髪の毛1本も見逃さず、指紋が残りそうなところはアルコールでピカピカに拭きあげます。鏡や水道の蛇口やシャワーヘッドに至るまで丹念に磨き上げました」

 楠山さんは、「旅館の清掃でもここまではしていなかったので、勉強になりました」と振り返る。

 ラブホの清掃員は客に姿を見られてはいけないため、部屋から部屋への移動は忍者のように隠れ、息を潜めながら行動することが求められた。「それが楽しい思い出です」と楠山さんは言う。

 また、ラブホにも業界用語があるようで……。

「例えば、“特掃”や“本掃”という言葉がありますね」

 特掃とは、部屋の回転率が少ない日に隅々まで念入りに掃除すること、本掃は汚れたところを集中的に掃除することだそうだ。

「ちなみに“軽掃”は、浴室の使用がなかった場合にチェックのみを行うことを言います。浴室は意外と清掃時間がかかるので、軽掃でいいときは助かりました」

 風呂を使用しない人がいるのは意外かもしれないが、実際に “浴室未使用”というケースも少なくなかったとか。

<取材・文/資産もとお>

―[ラブホの珍エピソード]―