新型コロナウイルスの感染拡大や防止を目的として、多くのイベントが中止や規模の縮小を余儀なくされたことは記憶に新しい。夏の風物詩である花火大会も、大きな影響を受けたイベントのひとつ。’23年に4年ぶりに開催され、話題となった東京の隅田川花火大会などがある一方で、全国各地で中止を余儀なくされた大会も……。現場では何が起こっているのか。花火大会の実情に迫った。
◆花火大会を開催したくてもできないワケ
「近年は花火大会を開催するのがどんどん難しくなっている」と肩を落とすのは、まちづくりコンソーシアムの理事長を務める立花晋也氏。まちづくりコンソーシアムは、2019年より秋川流域花火大会を主催してきたが、2024年度は同大会に約4000万円もの予算を計上している。
この金額が多いのか少ないのか、ピンとこないかもしれないが、過去の決算総額と比較すると一目瞭然だ。
【秋川流域花火大会の決算総額】
2019年/第1回大会:1271万9014円/※花火は2000発
2020年/第2回大会:540万6997円/※花火は500発
2021年/第3回大会:571万8465円/※花火は1000発
2022年/第4回大会:1330万724円/※花火は2000発
2023年/第5回大会:2437万8341円/※花火は3500発
2024年/第6回大会:約4000万円(予定)/※花火は5000発
コロナ禍で規模を縮小して開催した2020年度、2021年度は例外だが、2000発の花火を打ち上げた同規模の2019年と2022年度の決算総額は、約1300万円前後だった。2023年度は前年よりも決算総額が倍近く増えている。打ち上げた花火の数も増えているものの、原因はそれだけでなく、花火大会を運営するうえで不可欠な費用の高騰が大きく影響している。
◆花火代や人件費が軒並み高騰
今年の決算額が前年度から1.6倍以上に増額した理由を、立花氏は「全国的な物価高により、警備員人件費や花火費用が高騰したから」と明かす。
「2019年度と比較すると、花火代は30%も値上がりしました。さらに、警備に係る人件費は10%程度、設備費も10%程度は値上がりしています。私たちは、地域の活性化と魅力ある街づくりに寄与することを目的として、第1回目の花火大会から無償で事業を行ってきました。
その思いに賛同いただいた協力企業の皆さんのご協力があったからこそ実現できてきましたが、今後も継続的に開催していくために、本年度からやむを得ずチケットの有料化をはかることになりました」
しかし、チケットを有料化にしたことで金銭面の問題が一気にクリアになるわけではない。
「花火観覧用のイスやカフェチェア、カフェテーブル、テント、ストーブなどの設備を用意したり、会場までの動線を前年度以上に整えたりするために、事前の想定以上の設備代がかかってしまいました。前年度と比較すると、設備代は約4倍に増えています」
◆物価が高騰する中でも新たな試みにチャレンジ
花火大会を開催するのが年々厳しくなる中でも、大会を心待ちにしている協賛企業や地元住民のために、さらなるクオリティアップを目指している。
「これまで打ち上げ場所は3か所でしたが、今年は4か所に増やしました。さらに、大きな打ち上げ花火の見栄えをよくするために、低空で輝く花火の演出にも力を入れています。
また、今年も花火と音楽を共演させる予定ですが、これまではレンタルで音の質が悪いという課題があったので、今年は専門の業者にお願いしました。どうしても予算は増えてしまいますが、有料化に踏み切ったからには、例年以上に満足していただきたいですから」
◆今いる仲間たちと60歳まで花火大会を続けたい
コロナ禍でも完全リモートで開催し、物価高などを理由に全国各地で花火大会が中止になる厳しい状況下でも、立花氏には秋川流域花火大会を継続していきたいという強い思いがあった。
「“コンソーシアム”とは、共通の目的を持つ複数の組織が、協力するために結成する共同体です。2019年当時、私はあきる野青年会議所(通称JC)の理事長の時に、現在の事業を立ち上げました。それから5年目に現在のまちづくりコンソーシアムを立ち上げ、JCから事業を移行し、現在は共催として事業を行なっています。
第1回目の花火大会を開催するにあたり、会場を貸してくださったサマーランドの社長と約束したんですよ。『継続的に開催してもらえるのであれば、サマーランドとしては、協力をさせていただきます』って。
その時に私は覚悟を決めました。私は理事長として代表を務めておりますが、今年43歳になります。今後も地域のまちづくの産業として、今いる仲間たちとは60歳まで続けていきたいと考えています」